三・五章 あなたは生き残りのドラゴンの息子に嘘をついた
第42話 復讐なんて……とは言えません
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なたのおかげでドラゴンのことがよくわかりました。同時に、すでに一人でドラゴンを討伐できる状態であるという確信を得ました。
ドラゴンとは、噂に聞いていたような難攻不落の怪物などではありませんでした。その体は大きさこそ違えど、トカゲやワニのようなありふれた動物と変わりませんでした。爪は鋭く、鱗は鎧のように硬いですが、腹部は背中に比べ弱く、体内はおそらく口腔から肛門に至るまで無防備な粘膜。何匹いようが私の火魔法で倒せる――そう思いました。
そして今、やっと復讐を果たせるときが来たのです。
これまでの経緯を説明してゆくアランの口調は、けっして激しくはなかった。
だがその静かな灼熱感は、ドラゴン態のシドウに届くには十分すぎた。
イストポートを出てから彼が自分たちについてきたこと。そのような目的があったとは気付かなかった。考えもしなかったことだ。
シドウは恐怖を覚えた。
足元にティアがいなければ本当に後ろに下がってしまっていたかもしれない。
「……」
言葉が出てこない。
アランの説明の途中も、シドウは一切口を挟まなかった。
否、言葉が見つからなかったのだ。今も彼になんと言えばよいのかわからない。
『復讐なんて無意味です。そんなことをしても失われた命は戻ってきません』
とてもそんなことを言えるものではない。
復讐というものが前向きでない、後ろ向きな感情であることは、まだ若いシドウにもわかる。
そしてそれに囚われることが、目の前の赤髪の青年にとってあまりにもったいないことであることも、わかる。
だが、重い。
重すぎる。
彼のここまでの人生、それが重すぎた。
そして、自分は加害者であるドラゴン族の子――。
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