三・五章 あなたは生き残りのドラゴンの息子に嘘をついた
第41話 あなたは、誰ですか
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気のせいか、空だけではなく景色全体に、重たい灰色がかかっているように感じた。
シドウはゆっくり、いや、おそるおそる着陸した。
母親デュラと赤髪の青年アラン、その両者のちょうど等距離になるところへ――。
「母さん、ただいま」
ティアを横に降ろすと、シドウは人間の言葉で母親に挨拶した。
アランのほうへは……挨拶できなかった。
一瞬、「誰だ?」と思ったからである。
もちろんアランであることに間違いはない。が、表情は険しく、アランと聞いて思い出す穏やかな微笑ではなかった。
しかし、なぜかまったく覚えのない雰囲気のものとも思わなかった。
「シドウか。おかえり」
ドラゴン特有の低く太い、しかし静かな声で、母親デュラが挨拶を返してきた。
「シドウくんとティアさんでしたか……。まさかここで再会するとは。なぜここに?」
デュラに向けていた手のひらが、スッと降ろされる。
険しい顔は緩み、眉間の皴も消えた。
それでも、シドウの記憶に定着していた彼の顔ではなかった。しつこいくらいの頻度で、必要以上の近距離で向けられ続けていた、あの微笑ではなかった。
「俺らは、これからグレブド・ヘルにある旧魔王城に行って、新魔王軍なるグループの危険なアンデッド実験を中止してもらう予定です。両親にそれを伝えるために来ました」
赤髪の青年と母親の両方を見ながら、シドウは答えた。
「なるほど。そういうことでしたか」
アランは言葉を返してきた。
デュラのほうは特に言葉は返さず、シドウを見てゆっくりと一度まばたきをした。
「アランさん。俺のほうからも、あなたは、何をしにここに……とは聞いてもいいですか?」
ドラゴン態であるシドウの声が、かすれ、そして震えた。
巨大なシドウの心臓は、彼の返事を待たず、すでに速く大きく拍動し始めていた。
「私はこれから――」
シドウに対し、アランは言った。
「あなたの母親を処刑するつもりです。そのために今ここにいます」
その瞬間、かすかに残っていた希望は打ち砕かれた。
彼はたまたまこの山に通りかかって、ここまで様子を見に来てくれて、兄弟たちを焼き払った犯人から母親を守ってくれようとしていたのではないか――ということは、なかった。
登山道で兄弟たちを焼いたのは彼であり。
そして今、自分の母親を攻撃しようとしていたのだ。
「冗談……では、ないんですよね……?」
「そう見えますか?」
間髪なく返した彼の声は、穏やかなれど、熱帯であるペザルの空気すらも凍らせるようだった。
――あなたの母親を処刑するつもりです。
彼の言葉は過去形ですらない。
こうやって自分やティアと再会した今も、その意
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