三・五章 あなたは生き残りのドラゴンの息子に嘘をついた
第41話 あなたは、誰ですか
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思が変わらないということだ。
少し前、彼とは一緒に旅をした。
先輩冒険者ということもあり、彼は大人びていて、要所で的確なアドバイスをくれていた。正式なパーティメンバーではないのに、マーシアの町で事件が発生したときは一緒になって考えてくれて、一緒になって問題解決にあたってくれた。別れるころには信頼関係すらも出来上がっていたと感じていた。
また会えるようなことがあれば、今度は離さず、「一緒に来てください」とお願いしようかと思っていた。
旧魔王城に行くことが決まってからは、戦力的な不安からもその思いは強くなり、ダラムを出発する前に冒険者ギルドで彼の消息を尋ねたくらいだった。
なのに。
彼は自分の兄姉たちを焼き、そして今、母親を処刑≠キると言っている。
なぜ?
その思いしか出てこなかった。
父母や兄姉たちとの久しぶりの再会。みんな元気にしているだろうか。
ダラムから空を飛んでいるときは、そんな気分だった。
なのに。なぜこんなことになっているのだろう。
今、自分はいったい何を見ているのだろう。何を見せられているのだろう。
「アラン、どういうこと?」
足元にいたティアからそんな言葉が聞こえてきて、シドウは我に返った。
赤髪の青年を見る。やはり記憶にある彼の顔ではない。
「アランさん。俺も聞きたいです。どうしてですか? 理由を教えてください」
アランは静かな、いや、まだ静かであろう抑えた光を、濃い碧眼から発した。
「私が生まれたのは、ウルカジャーニアという町です」
「……!」
その地名に、シドウの首がビクンと震え、硬直した。
「地理学者に弟子入りし、この世界のことを勉強したあなたなら。そして何よりもこのドラゴンの息子であるならば、ご存知のはずですね」
「……はい」
固まった長い首は、ゆっくりと垂れていった。
「え、何? どこよそこ。知らないけど?」
「ティア。今はもう、その町はないんだ。大魔王がいたころ、降伏を拒んで、魔王軍の傘下だった時代のドラゴン族に……一夜で皆殺しにされたから」
シドウは視線を落としたまま、ティアにそう説明するのがやっとだった。
「そうですね。ですが私はたまたま町の外にいたため、生き残っていたのです」
シドウがアランのほうに顔を戻すと、ふたたび彼の眉間には皴が寄っていた。
見るのがつらく、また顔を逸らしたくなった。
だがそうしようとした瞬間、彼の濃い碧眼が強く光った。
首から上が金縛りにあったように固まり、逃げることは許されなかった。
そしてその激しい光を受け、シドウは思い出した。
先ほどアランがシドウの母親と対峙していたときの雰囲気。それは確かに覚えがあった。
マ
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