三章 天への挑戦 - 嵐の都ダラム -
第39話 天へと駆けのぼる国、ダラム
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」
ティアの制止もむなしく、三発目が落ちた。
「痛っ。あ、いや、とめようとはしたのですが。とまらなくて」
「変身して脅せばいい。すぐとまるだろう」
「いや、そんなことをしては……」
「事故死続出よりはマシだろう?」
「……マシ、ですね」
「小さな基本に忠実であろうとして、大きな基本がおろそかになったな。
お前は母親から『どんなときでも人間の味方を』と言われていたな? それを間違って解釈してはならない。ときには人間に嫌われ怖がられることが人間に味方することになる場合もある。今回はまさにそうだったかもしれん」
「……」
「今後に生かせ。学術の徒は嫌われてなんぼなところもある。いざというときは勇気を持って嫌われろ」
「はい」
シドウはぺこりと頭を下げた。そしてシドウの師匠はこう続けた。
「私も、だいぶあいつ≠ノは嫌われたからな」
そう言って、後ろを振り返る。
シドウとティアも、彼の後ろのほうに目をやった。
気づかないうちに、魔法使い軍団以外の人間が大量に来ていた。その恰好や控えている馬たちから、どうやら兵士たちであろうということがわかる。
そのなかから一人こちらにやってきたのは、美麗な容姿に高貴な格好の女性。
なんと、ダラム王国の女王だった。二人にとってはダラムに到着したときに謁見して以来である。
驚く二人に、女王は頭を下げてきた。
「さっき聞いたが、大臣に収賄疑惑があるらしいな。すぐに調査するよう指示は出したが、今回の件は私の責任もあ――痛っ」
「そうだな。大臣よりも上位であるお前の責任は重大だ」
「ジジイ、しゃべっている途中で叩くな」
「フン。お前も今回の件、書類にサインしていたのだろう? どうせ中身もろくに見ずにサインしたのだろうが……。天候を人の手で操ろうなど、愚かにもほどがある」
シドウの師匠は真っ青な空を一度見上げた。
「この青い空よりも高いところから世界を見ると、どう見えるだろう――。私は子どものころ、そう考えたことがある」
女王は黙ってしまった。
シドウの師匠は知るべくもないが、その話は奇しくも、謁見のときにシドウが女王にしていたものだった。
そして、彼は視線を空から女王へと戻す。
「当然今はそんなことはできぬし、私の生きているうちにはありえないだろう。だが、国さえしっかりしていれば技術は進歩し続ける。遠い未来、いつかは実現するはずだ」
シドウの師匠は続けた。
「この国ほど空と密接に付き合ってきた国はない。私は、青い空よりも高いところへ到達する最初の国となるのはこの国だろうとも思っている。そして期待もしている。だから天気の研究はどんどんやればいい。
だが、自然とは戦う対象ではないことを忘れて
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