三章 天への挑戦 - 嵐の都ダラム -
第39話 天へと駆けのぼる国、ダラム
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嵐から一晩が明け、前日の天気が嘘のような青空が広がっていた。
風はまだ強いが、凶暴さはなくなっていた。
「暑いけど、いい天気!」
「そうだね」
気持ちよさそうに両手を挙げるティアに、シドウは相槌を打った。
潜んでいた旧魔王軍の残党は、結局アンデッドドラゴンを連れていた人型モンスター二人だけだったようである。大灯台の中には誰もおらず、ドラゴン見学会も一階にあったホール状の部分で無事に開催され、大灯台の中では平和な一晩を過ごした。
びしょ濡れだった二人の服も、魔法使い軍団の火魔法と風魔法で乾かしてもらった。ティアのタンクトップとカンフーパンツ。シドウのみすぼらしい服。どちらも爽やかな着心地に戻っている。
シドウたちと魔法使い軍団は、後片付けをしてから王都へと帰ることになった。
真っ青な空のもと、瓦礫の撤去や飛散した荷物の回収を手伝っていたシドウとティアであったが、突然の来訪者が現れた。
「シドウ。久しいな」
「えっ? あっ? お久しぶりです。え、どうしてここに」
現れたのは、高齢で灰色の髪を短く刈っている男性。シドウ本人としては、ここで会うことが大変に意外な人物だった。
そして混乱した頭を、木の杖で物理的に叩かれた。
「あ、痛っ」
「たまたまダラムに来ていたんだが、この実験の話を聞いてな……。経緯はすべて魔法使いたちから聞いたぞ。お前がこの国にいながら、なぜこのような馬鹿げた実験がおこなわれた? しかも現地にいたとはな。なぜとめない」
「痛っ」
また一発。
手にしているのは木の杖だが、その男の腰や背中はピンと伸びていた。足が悪いという理由で持っているわけではなさそうだ。背丈はシドウよりも高い。発声も明瞭。
高齢なのは間違いないが、老人という雰囲気はまったくない。壮年と言ってよい印象で、全身がみなぎっているように見えた。
「ちょっと! 誰だか知らないけど! 頭叩いたらシドウが馬鹿になっちゃうでしょ!」
「誰だお前は」
慌ててとめに入ったティアにも、邪魔するなと言わんばかりである。
「わたしはシドウのパーティメンバーよっ! あんたこそ誰よ」
すると、老人の顔はやや柔らかくなった。
「ほう、そうだったのか。それは失礼した。私はウラジーミル。学者だ」
「……。んー? あれ? どこかで名前を聞いたような」
「俺の師匠だよ」
「思い出した! そうだ! シドウの師匠だよ! 初めて見た! ……えっと、初めまして?」
「初めまして、お嬢さん。もう一発叩くのでどいてなさい」
「だから馬鹿になっちゃうからダメ!」
「大丈夫。お嬢さんの心配は無用だ。こんな実験を目の前でやらせてしまっている時点で、すでに十分馬鹿だ
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