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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン26 復讐の最終方程式
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たからだ。笹竜胆も悲し気に目を伏せ、目の前で起きているこの理不尽への反抗とも取れるその叫びを甘んじて受け入れる。

「どうして、じゃない。だから、さ」

 しかし糸巻だけは、その叫びに真っ向から答えた。爆心地ど真ん中の空気にそぐわない静かな声の調子は、溢れ出る激情を抑えきれずにヒステリー寸前に陥っていた文学少女も怒りを忘れて呆気にとられ、百戦錬磨の笹竜胆も思わずその炎に照らされた赤髪を仰ぎ見る。しかし当の本人は集まる視線をものともせず、正面から疑問をぶつけた竹丸の目を見据えた。

「なんでこんなことに、なんてことはもう問題じゃない。こんなことになった、だからアタシらが動く。それだけさ」
「そんな……」
「乱暴な話だと思うか?でもな、結局アタシみたいにガサツな女には、それしかやりようがないんだよ。いや、アタシだけの話じゃない。大なり小なり、アタシらの時代のプロなんてそんなもんだった」

 そこまで言い切って一呼吸置き、どこか達観した表情で目の前の若者2人を順繰りに見やる。その後ろの笹竜胆の表情は謎めいていて、何も感情は読み取れない。

「そこの笹竜胆みたいに一戦を退いた奴も、鼓みたいにデュエルポリスを選んだ奴も、巴みたいなテロリストになりやがったアホも……道は違ってもどいつもこいつも対処療法ばっかり得意になっちまってな、質の悪いことになまじそれで何とかなってきたもんだから、根元を絶つために原因を考えるなんてことは誰もやろうとしなかった」

 言いながら何を他人事のように、と胸のうちで自嘲する。胸の痛みもお構いなしに言葉を発する自分の口が、まるで自分のものではないかのように感じられた。

「何かがどこかで間違った。もしかしたら、その時に正しく対応できてりゃ今みたいにはならなかったのかもしれない。誰かが根元を断てさえすれば、何事も起こらなかったかもしれない。でもな、アタシらは誰一人としてそうしなかった。そのツケが、こうやって今に回ってきてるのさ」
「……っ」
「だから、こんな馬鹿馬鹿しいことにはアタシらの代でケリをつける。それが未来のある八卦ちゃん、それに竹丸ちゃんだったか?アンタらの代にくれてやれる、せめてものけじめだ。アタシらの背中を追いかけてくるのはいいが、間違ってもその後ろをついてくるんじゃないぞ。アタシらみたいな失敗は、もう二度とデュエルモンスターズの歴史には必要ない。今日のデュエルを見て、少しでも楽しいと思えた瞬間はあったか?その気持ちを大事にして、その瞬間を広げて欲しい。アタシみたいな時代遅れのロートルが、次の世代に言ってやれるのはそれだけさ」

 長身の糸巻は、まだまだ成長期の少女よりも頭2つほど背が高い。軽く屈みこんで眼鏡越しに見える少女の瞳と目線を合わせ、気が付けば普段は決して口にしない心の内をかなり深い
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