ターン26 復讐の最終方程式
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「駄目だ」
「どうしてですか、お姉様!」
断言する糸巻に、ほとんど掴みかからんばかりの勢いで食って掛かる八卦。先ほどのファイナルシグマとアルティメットレーナーの激突の余波でいまだあたりには残り火と煙がくすぶり、あちらこちらから物の焼ける独特な匂いが漂ってくる。
現在彼女たちがいるのは、炎と衝撃によって半壊状態に陥ったステージの成れの果て。被害の比較的少ないその裏手には、現在も彼女たちのために……そして避難のため誘導される観客たちのために、止める間もなく飛び出していって時間を稼いでいる青年の声が聞こえてくる。
「まだまだぁ!希望識竜スパイダー・シャークの効果発動、ラスト・リザレクション!このカードが破壊された時、墓地のモンスターを蘇生する。甦れ、グレイドル・ドラゴン!」
「グレイドル・ドラゴン?確かそのカードも、破壊された際に水属性モンスターを効果を無効として特殊召喚する効果があったな。儚無みずきによる莫大なライフ回復といい、その蘇生の連鎖といい。くだらない延命だな」
「その延命でちゃんと時間が稼げてるんだ、文句はないね。ほらほら、悔しかったらはやく見せてよワンショットキル。やれるもんならね!」
「……ふん」
わかりやすい挑発だが、彼女たちに聞こえてくるその声色は硬い。おそらく、彼自身が悟っているのだろう。その防御と延命にも、あまり猶予が残されていないことを。
糸巻は、だからこそアイツの犠牲を無駄にしないためにもこの戦いはデュエルポリスたる自分の手で終わらせなければならないと決意を新たにする。その考えを察したからこそ寿と笹竜胆の2人はこの場に残るのではなく、あえて観客への避難誘導を買って出たのだ。しかし、少女だけはその考えに、身勝手と知りつつも異議を唱える。
「お願いですお姉様、私にやらせてください!早くしないと、遊野さんだって……!」
「だから駄目だっつってんだ。八卦ちゃんこそ早く行きな、アイツが何のためにあそこに残ったと思ってんだ?」
「それは……でも、私は師匠から……!」
「ああ、そうだな!それで、その師匠は今どうなってる?八卦ちゃんまでああなりたいのか、あん?」
そう言いつつ、避難の殿を務める寿がおぶっている茶色の物体を顎で指し示す。全身をズタボロに焦がしたそれは、よく目を凝らしてみないと今も微かな呼吸をする生命体だとは、それ以前に人間であることすら気づくことができないだろう。まして、それがつい先ほどまで少女の師匠……夕顔と呼ばれていた男であるとは。仮にこの場を生き延びたとして、彼が立ち直れるかはわからない。あとは医療の進歩と、彼自身の生命力に賭けるしかないだろう。
少女が言葉に詰まった隙に、話は終わりだとばかりに腕を組んで盤面へと視線を移す糸巻。彼女だって少女の気持ちは痛いほどわかるし、そ
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