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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
それからあたしは、暴かれる
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「紫…式部!?」

驚きを隠せない。信じられない
ゲームの架空の存在の人がこうして現実にいるなんておかしすぎる。

世界はおかしくなってしまったのか。いや、とっくにおかしいか。

「…。」

彼女の瞳は真っ直ぐあたしを見ている。
まるで吸い込まれそうな瞳。見ていると心まで見透かされているような気持ちになる。

「あの…。」
「あ、はい?」

見とれていた中、紫式部だという彼女が口を開いた。

「念のためお聞きしますが…あなたが私のマスター、"葵"様ということで…よろしいのでしょうか?」

葵。
それは確かに、あたしの名前だ。

「その…紫式部…さん?」
「なんでしょうか?」
「あ…あたしもよく分かんないんだけどさ、とりあえず…あたし自身があなたのマスターってコトで…いいのかな?」

思考が追い付かない。
いや、この世界が異常になってからずっと追い付いていない。

「なんかこんなことになってさ、化け物に襲われて、そしたら助けに来てくれて…さっきから頭が混乱してて、その…どうしたらいいのかな?」
「…。」

すると紫式部はふと目を下にやった。
視線の先にはあたしの脚。
先程蛇に噛まれ、いまだじくじくと痛む負傷した脚だ。

「怪我を、されているのですね?」
「ああうん。さっきの化け物にやられて…もしかしたら毒とか入ってるかも。」

今更ながらそんなことに気付くあたし。
かもじゃない。絶対毒いれられてる。
すると紫式部らしき人はしゃがみ、あたしの視線にあわせたかと思えば

「少し、痛みます。」

優しく脚を持ち、血の止まらない噛み跡に躊躇なく、

「え、ええ!?」

口をつけた。

「え、ちょ、ちょっと待って!」
「毒を吸い出しているだけですので…お静かに。」

それだけ言ってまた毒を吸いはじめる。
そんなことは分かってる。ただ…。
見ず知らずの女性に脚を触られるというか口付けをされるのはなんというか…こう。

「…っ。」

いや、よくない。これはあたしが"異常"なだけなんだ。
あたしは女性。そして向こうも女性。
別に意識することなんて全然ない。
欲情とか劣情とか、そんなものは関係ない。
それよりあたしは今この人に命を救われたんだぞ。
命の恩人に対してこんな感情を抱くのはどうかしている。
そう、おかしいのは…あたしだ。

「葵様…?」
「…あ、え?」

気がつけば、紫式部(多分)はあたしの顔をじっと見つめていた。いつの間にか脚には包帯がまいており、どうやら毒は取り除けたらしい。

「どうかいたしましたか?随分と難しい顔をしておりましたので…。」
「あ、ううん。なんでもない…です。」

取って付けたようなですに微笑む
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