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SAO−銀ノ月−
第三十一話
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嫌になって、腕を壁に叩きつけた……だが、不死属性の表示が出るだけなのは知っているが。

 俺の剣術がモンスターに対してとても有効なのは証明済みで、ソードスキルでないのにソードスキル以上のスピードであるからか、モンスターの思考ルーチンに少し異常をきたしている……の、だろうか。
だから、今攻略に行かずにサブダンジョンに潜っているのは、八つ当たり以外には金稼ぎぐらいの目的しかないことが、更に俺を苛立たせる。

「ナイスな展開じゃ、ないな……」

 誰にも向けていない――強いて言えば自分自身に言ったか――独り言が空中に溶け込んでいった……その時。

「……ッ!」

 どこからかアラームトラップの音がけたたましく鳴り響いた。
ダンジョン内のモンスターを呼び寄せる最悪のトラップを、この安全地帯近くの誰かが鳴らしてしまったらしい。
アラームの音は途切れたため、すぐさま発信源は壊したようだったが、タイミングとしてはもう遅く、モンスターが集まってくるだろう。

 アラームの音は比較的近かった。
放っておける筈もなく、俺はアラームの鳴った方へ走りだした。



 俺がいた安全地帯の隣の部屋の入り口に、このサブダンジョンの主力モンスターである《モスブリン》――外見は、まんま棍棒を持った人型の猪――がたむろしていた。
アラームトラップが近いとは思っていたが、まさか隣の部屋だったとは、不幸中の幸いだ。

「抜刀術《立待月》!」

 走った勢いのままに抜刀術を繰り出し、入り口を塞いでいる《モスブリン》を背後から切り裂き、部屋の中へ入る。
部屋の中には、20匹ほど……正確には23匹のモスブリンが、恐らくはアラームトラップを鳴らした四人のプレイヤーたちを囲んでいた。

「こっちに安全地帯がある! 転移結晶持ってないならこっちに来い!」

 近くにいた手頃なモスブリンを斬りながら、四人のプレイヤーたちに叫ぶ。
見るからに四人は消耗しており、このままではヤバそうだった。

「なっ……いきなり出て来てなんなんだテメェは!」

 全身の服装を真紅の色で固めた、大剣を持った少年が俺に向かって叫んでくる。
この限界の状況で出て来たイレギュラーに対しては、当然の問いだった。

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ《クラウド》! ……オッケー、みんな、あっちに向かって全速前進ー!」

 その場にそぐわぬ明るい声が、何故か武器を持たない小柄な少女から響いた。
見た感じ、四人の中でもっとも年下のようだが……武器を持たない彼女がリーダー格のようだった。


「……しんがりは、任せろ」

「お言葉に甘えるわぁ」

 しんがりを引き受けた両手矛に眼帯をつけた青年が、他の入り口から湧いて出るモスブリンに自らの武器を突き刺し
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