第二百四十話
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第二百四十話 弟に聞くと
美樹は毎日入浴してしっかりと身体を隅から隅まで洗う様になった、これまでもそうであったがこれまで以上にそうなった。勿論髪の毛もだ。
それでも匂いが気になりある日家で弟の信也に彼がリビングでゲームに興じている時に後ろから尋ねた。
「ねえ信ちゃんちょっといい?」
「ゲームの交代ならお姉ちゃんの部屋でしたら?このソフトしないよね」
「ゲームの話じゃないわよ」
弟が子供向けゲームをしているのを見つつ答えた、実際にそのゲームは自分には簡単なので興味はなかった。
「お姉ちゃんのこと」
「お姉ちゃんの?」
「お姉ちゃん臭いかしら」
かなりありのまま尋ねた、この辺り率直な美樹の性格が出た。
「どうかしら」
「別に」
信也はゲームをしつつ美樹に答えた。
「僕はそうは思わないよ」
「そうなの」
「うん、ただね」
「ただ?」
「お姉ちゃんお醤油の匂いするって言われる?」
「お醤油の?」
「そう、お醤油のね」
それのというのだ。
「そう言われる?」
「そういえばね」
美樹はここで自分達の学校で外国から来た子達に言われる言葉を思い出した、通っている八条学園は幼等部はおろか保育所から大学院まで世界中から来た海外組が半分を占めているからだ。
「日本人はお醤油の匂いがするってね」
「言われるよね」
「時々ね」
「僕この前タイから来たチャーン君に言われたんだ」
「お醤油の匂いがするって」
「そのままね」
「そうだったの、それはもうね」
美樹は弟に答えた。
「仕方ないわよ」
「そうなんだ」
「だって私達いつもお醤油使った食べもの食べてるわね」
「うん、日本だとね」
「だからね」
それでというのだ。
「もうお醤油の匂いがするっていうのは」
「仕方ないんだ」
「気にしても仕方ないわ」
「お醤油絶対にあるしね」
「その匂いがして当然だから」
こう弟に話した、そして。
自分の体臭が醤油の匂いなら別にいいと思った、もうこれはいつも食べているからどうしようもないと考えたからだ。それで弟の匂わないという言葉を受け入れてよしとした、そのうえで自分の部屋に戻った。
第二百四十話 完
2020・3・1
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