第二十話 保養施設
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
姉ちゃんと私や当時の仲間のみんなでエネルギー不足に怯えることもなく幸せに暮らせると思ってた。でも、戦争の最後でお兄ちゃんいなくなっちゃって…お兄ちゃんのために平和な世界にしようとしていたお姉ちゃんもいなくなっちゃった…私は見ていることしか出来なかった…お兄ちゃんにとってお姉ちゃんはきっと大切な人で…いなくなったお兄ちゃんの代わりに私がお姉ちゃんを守らなきゃ、支えなきゃいけなかったのに…」
いなくなってしまった。
“お兄ちゃん”や“お姉ちゃん”だけではなく、世話になった温厚で父親のような技術者の彼も。
戦いで傷ついたみんなの手当てをして、自分の面倒を見てくれたおばさんも。
気持ちが先走りして失敗する事もあったけれど組織の部隊長を任されたりして頼りになるお兄さんだった彼も。
話をするのが大好きで一度話し出すとなかなか終わらなかったけれど、昔話をたくさん聞かせてくれたお爺ちゃんも。
苦手だった人の部下だったけれど、明るくて気さくなお姉さんと生真面目で堅いけれど優しかったお姉さんも。
いつも自分に悪戯したり、仕事をサボったりしてみんなを困らせていた彼も。
みんないなくなってしまった。
頼りになる人はみんないなくなって、役立たずだった自分だけが生き残ってしまった。
過去の仲間や出来事を思い出してか、徐々に声が掠れていき、写真に落ちていく涙を見てエールはプレリーにハンカチを差し出した。
「これ使って」
「…っ、ありがとうエール」
プレリーは差し出されたハンカチを受け取って涙を拭くとエールに礼を言う。
「……プレリー、一人で背負い込まないでね?プレリーは一人じゃない。アタシやヴァン、ジルウェだっているんだから」
「ええ」
「ねえ、プレリーのお兄さんとお姉さんのこと…聞かせてくれる?」
「ええ、勿論よ。その代わり…私もあなたやヴァンのことを聞きたいわ」
「勿論!たくさん話そうよ!それで、プレリーのお兄さんって性格の方はヴァンかジルウェのどっちに似てるの?」
「そうね…お兄ちゃんはクールだったけど、内面はとても熱い人で負けず嫌いなところがあったからどちらかと言えばヴァン…かしら?」
ガーディアンの保養施設で、エールとプレリーの楽しげな会話が響いていた。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ