第15節「夢の中で逢った、ような……」
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人も、任務の事は一旦置いて楽しんでるんじゃないかと思う。……まったく、とんだ役得だな」
当然ながら、答えが返ってくる筈もない。
いつもの事だ。だが、これくらいの気休めでもしなければ、彼女がまだ生きていると信じられなくなりそうで……皆、怖いのだ。
あの日……落下してきた瓦礫に押しつぶされる寸前、セレナはツェルトに突き飛ばされた。
瓦礫による圧死をなんとか免れ、彼女は死から免れたかに思われていたが……運命は残酷だった。
セレナが突き飛ばされた先には、赤々と燃え広がる炎の海。
ツェルトが気付いた時には既に遅く、セレナはその真っただ中へと落ちていき……。
結果、セレナは絶唱のバックファイアによる出血と全身を覆う大火傷が重なってしまい、それぞれの症状を同時に治療しなければ死に至る状態へと陥ってしまったのだ。
それがツェルトが右腕を失った理由であり、セレナがこの中で眠る経緯。
腕を潰してでもセレナを救おうとして、報われなかった彼の過去である。
「……実はさ、最近迷ってるんだ……」
ぽつり、と。ツェルトは切り出した。
「融合症例第二号に会ってから、ずっとそうだ……。……あいつ、姉さんのライブを台無しにされたって……そう言ってた。俺達にとっては計画の一環でも、あいつにとっては大切な姉さんの晴れ舞台だったんだ……」
俯きながら、ツェルトは掌の皮を爪が切り裂くほどに握りしめる。
彼を苛んでいるのは迷いだけではない。翔を始めとした多くの人の心を踏み躙ってしまったという自覚が生まれたからこその、自責の念だ。
踏み躙られる痛みを知りながら、誰かの想いを踏み躙ってしまった自分への怒りだ。
いくら世間から悪と誹られようと、正義の為に悪を貫く……それだけが最善の道だ。
茨の道ではあるものの、自分達にはこれしかないのだ。
そう信じて、進んできたはずなのに……。
敵であるはずの少年の言葉が、どうして胸に刺さり離れないのか。
それが彼には分からない。……いや、納得してしまえば、自分たちが信じてきた正義を否定することになるのを理解しているのだ。
それが酷く恐ろしい。
何より、そう在ると決めた一人の乙女を裏切れない。
悩めば悩むほどどん底で、何が正しいのかさえ分からなくなっていく。
消え入りそうな声で、ツェルトは絞り出すように呟いた……。
「教えてくれ、セレナ……。俺はどうすればいい?」
ff
「はわーッ!? こ、これは……ッ!」
リディアン新校舎、その校門をくぐり校庭へと足を踏み入れた切歌と調。
そこには、二人にとっては夢のような光景が広がっていた。
「屋台がこんなに出ているなんて……」
「すごいデス……なんデスか、ここはッ!?」
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