第15節「夢の中で逢った、ような……」
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い……。ツェルトにさえ嘘を吐いて、この役割を演じ続けている……。けれど、この道を選んだ以上、立ち止まることは許されない。わたしはもっと……もっと強くならなければ……)
ポケットの中に仕舞った、罅の入ったペンダントを握りしめる。
浮かんでくるのは、炎の中に佇むあの日のセレナ。
命を燃やして皆を護った妹の強さと、何もできなかった自分の弱さを痛感した、あの日の光景だ。
(私は強くあらねばならない……。マムのため、調と切歌のため。ツェルトのため。そして私を救ってくれた、セレナの為に……)
「……セレナ」
無意識に呟いた、最愛の妹の名前。
彼女は今でも、氷の中で眠りについたままだ。
(あの時、皆を護ったセレナ……。……私はあの子のように強くなれるの? あの子のように、マムを、調を、切歌を、ツェルトを護れるの……?)
自問自答し、迷いを振り払うように首を振って、そして自分に言い聞かせるようにマリアは呟く。
「ダメね、余計な事を考えてる場合じゃないわ。今は少しでも強くなるため、この槍を振るわなきゃ……」
シミュレータールームへと入ったマリアは訓練用プログラムを起動させ、無針注射器を首筋に当てて緑色の液体を注入すると、聖詠を口ずさむ。
“溢れはじめる秘めた熱情”と……。
ff
マリアが訓練を続けている頃、ツェルトはエアキャリアのとある一室へとやって来ていた。
医務室のすぐ隣にあるその部屋は、多くの機械が並ぶ。
それらは部屋の中心に存在する、円筒状のカプセルに繋がれていた。
カプセルの内側は冷気で満ちており、その中に眠る少女をあの頃の姿のままで留め、生き永らえさせてくれている。
「セレナ……今日もお見舞いに来たぞ」
ツェルトはカプセルの前に立つと、微笑みながら声をかけた。
そう。カプセルの中に眠るのはセレナ……6年前、暴走するネフィリムを食い止めるため絶唱を口にし、燃え盛る施設の崩落に巻き込まれたマリアの妹だ。
ツェルトやマリア、調、切歌も、日に一度はこの部屋に来ては、カプセルの中にいる彼女へと言葉をかける。
特にマリアとツェルトに至っては、一人で二時間近く籠っていることもある程だ。
かける言葉は各々様々だ。
その日一日の出来事を語ったり、初めて食べた美味しかったものを自慢したり。
時には、他の誰にも言えない弱音を吐き出すことも……。
「……今日はな、切歌と調がネフィリムの餌を取りに行ってくれているんだ。それで、日本の装者達が通っている学校に潜り込みに行ってるんだが……今、向こうは学園祭の真っ最中らしい。ちょっと羨ましいよな。任務とはいえ、日本の学校のイベントだ。きっと二
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