第15節「夢の中で逢った、ような……」
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日本某所、エアキャリア内。
「マム……」
「まったく、こんな時に役に立たないオバハンは……」
「……ドクター」
億劫そうな表情のウェル博士を、腕組みしたまま壁にもたれるマリアが睨む。
「そう睨まないでくださいよ。はいはい、分かってますって。ナスターシャ教授の治療でしょう? 手は抜きませんから安心してください」
「……ならいいわ」
「まあ、この僕でないと、ちゃんとした医療は施せませんからねぇ……感謝して欲しいものです」
「……ああ、その通りだ。だが、もしマムに何かあったらその時は――」
「おお怖ッ! 全く、躾けもなってないんですから。狂犬ですか、君は」
同じくウェル博士を睨みながら、しかしこちらはマリアとは違うものを瞳に宿した視線を向けるツェルトが、苦虫を?み潰したような表情でそう言った。
「マムがもう長くはないからと、薬に毒を仕込むくらいはやりかねないお前の首を狙うのは当然だろ」
「人聞きが悪いですねぇ! 医療で人を殺すなんて科学者の風上にも置けない真似、この僕がするはずがないでしょう!」
大真面目な顔でウェル博士は反論した。
「僕は天ッ才生化学者としての才能に誇りを持っているんです。その名前に泥を塗るような真似だけは、決してするつもりはありませんよ」
「さて、どうだか……」
「オーケー、ツェルト。そこまでにして」
今にも掴み合いになりかねない二人を、マリアは溜め息混じりに仲裁する。
「まったく……。さて、それでは僕は失礼しますよ」
「ええ。任せるわ」
ウェル博士は襟を正しつつ、そのまま医務室へと移動していった。
「まったく……どうしてあんな胡散臭い男に、マムの命を預けなくちゃならんのか……」
「いけ好かない男だけど、マムの治療には必要な人材よ。彼の生化学の知識は折り紙付きなんだから」
生化学者であり、F.I.S.内でも天才と称されていた彼は、ネフィリムの起動実験にも関わった程だ。
マリア達が使用しているLiNKERを調合しているのも彼であり、機関の中では櫻井了子に次いでシンフォギアの真理に深く分け入っている存在であったとも言えるだろう。
性格に難はあるが、その腕と頭脳は確かなものだ。彼もまた、『フィーネ』には必須の人材なのである。
(マム……早く良くなって……)
マリアは壁から離れると、部屋を出ていこうとする。
「マリィ、何処へ?」
「ちょっとシミュレーターで運動してくるわ。どう取り繕っても、私達は所詮、時限式の偽物装者。だからとて、いつまでも小細工にばかり頼っては居られないでしょう?」
呼び止めたツェルトにそう答えると、マリアはシミュレータールームへと向かって行った。
(私はあの子たちに無理をさせているのかもしれな
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