本編番外編
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此処ではない他の世界で・弐
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大魚の腸を取り出しながら、私は苛々としてきた気分を振り払うために、頭を振った。
――冷静になれ、私。怒りは自分を乱すだけで最終的な手助けにはならないのだ。
赤く染まった両手を水で濯ぎながら、これまでの状況をまとめあげる。
うろ覚えながらも残っている原作知識と奴の零した情報を組み立てる。
私が今現在を身を置いている世界には、私と違って正真正銘・男の“千手柱間”がいる。
そして奴よりも年上――そう言っていた事からこの世界の“千手柱間”は立派な成人男性で、恐らく既に何らかの役職に付いている立場にある筈。
それは千手の頭領かもしれないし、原作知識曰く初代火影の地位かもしれない。
だとすれば――……元の世界に戻るために、接触をしておいて損はないだろう。
地位が高く皆に必要とされている役職についていれば、それだけ情報を集め易い。
よし、取り敢えず第一目標としてこの世界の“千手柱間”と出会う事を入れて置いても構わないだろう。
「けどなぁ……」
魚をぶつ切りにしていた手を休めて、自分の左手を憂鬱な眼差しで眺める。
そこには黒く奇妙に捻れた文様が手首を一周する形で刻み込まれていた。
詳しい原理はよく分からないが、これは罪を犯した忍者に施される類の『呪印』なのだそうだ。
この術を施された者は術の使用者から様々な制約を受けざるを得ないとか何とか――この術が施された時のあの野郎の心底愉快そうな表情まで思い出して、気付けば唸る様な声を漏らしていた。
あの男曰く、逃げ出しても直ぐに居場所が判明する様な探査式の術式と日に一定量のチャクラを被術者から奪うと言う術式が施されているらしい。
実にナチュラルに嫌がらせを兼ねた代物である。
おまけに術を解呪するには最低でもあの男レベル、またはそれ以上の実力者でなければ無理なんだそうだとか。
十代前半の幼気な少女にこんな物を付けやがって、あの野郎。
……毛髪単位で死滅してしまえ。
ぶつぶつと呪いの言葉を吐きながらも、料理をする手は休めない。
この料理が完成した暁には、さぞかし私の怨念と呪詛が込められた素晴らしい一品になる事間違いない。
――……これでも食って腹を下せば良いのに。
ぐつぐつと沸騰し出しただし汁の中に旬の野菜とぶつ切りにした巨大魚の切り身を投げ込んだ私は、ちらりと窓の向こうの空を眺める。
夕焼けの色に染まった空の姿は、見ているだけで心が浄化されそうになるくらい美しい光景であった。
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