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曇天に哭く修羅
第二部
My Enemy
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「つまり、このレックス・ディヴァイザーはまだ立華紫闇とクリス・ネバーエンドの両名を殺せるということ。体術の心得も有りますし、そう簡単には終わりません」


耳に入る宣言にクリスは(たぎ)る。

危うく自分が戦いそうになるほど。


(でもそれは駄目。レックスはシアンに任せたんだから。私は紫闇(あいつ)のことを信じて後ろに下がって居れば良い)


一方の紫闇も滾っていた。

熱望、戦意、友愛、憎悪、期待、憧憬といったあらゆる感情が湧き上がり、紫闇の心を満たして爆発しそうになる。

座り込んで腰を下ろしていた紫闇は躍動して跳び跳ね本能のまま、盛りが付いた獣のようにレックスを見定め走駆。


(最高だなこいつ!)


紫闇にとってのレックスとは闘わずには居られない程の好敵手であり、己が目標としている大英雄《朱衝義人/あかつきよしと》とは違う意味で尊敬できる存在。

そんな相手が自分に集中して神経を注ぎ、全身全霊を懸けて来ているのだから堪らないことこの上なしと言って良いだろう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


(流石は立華紫闇(たちばなしあん)ですね。そうこなくては。でなければクリスと、私の最愛と天秤に掛ける価値が無いというもの)


レックスは急激に迫る紫闇に対して再びカウンターを仕掛けるが今度は紫闇が狙ったように自分の頭を攻撃に合わせた。

衝突音が鳴り嫌な音が鳴る。


(どうだレックス?)


カウンターにカウンター。

紫闇はレックスの拳を額/ひたいで受けることで手の骨を折ってやったのだ。

恐らく指の骨は砕けている。


(駄目ですね。まともに使えない)


レックスは左手にそう判断した。

しかし彼も紫闇も解っている。

それが『まともな人間』の思考だと。

だが二人の精神は『鬼』だ。

『人』ではない。

使えない左手でも使う。

そんな時も有る。

それが必要なら躊躇しない。

彼等はそういう生き物だから。


(まあ今はその場面じゃないけど)


紫闇は更に近付く。

そのまま掴もうとした。

しかしレックスの右足が上昇。

紫闇の股間に直撃。

まともなら失神したり死ぬかもしれないが今の狂気に染まっている紫闇にとっては普通の痛みは効かず、効く痛みは快楽に過ぎない。


「Foooooッ!!! 良いね! Coolに響く痛みだッ! よくやったッ!!」


痩せ我慢では無かった。

涙も(にじ)ませず顔も歪ませず汗も掻かずにレックスの行為を賞賛する紫闇は嬉しそうに笑いながら右の拳を黄金に包む。

そのまま【禍孔雀(かくじゃく)】を顔面にブチ込み爆発させて結界の壁
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