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戦国異伝供書
第八十六話 紫から緑へその五

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「そして家臣が背いたりすれば」
「その家は衰え」
「滅びもします」
「だからです」
「毛利家はですね」
「乱れてはなりません」 
 穏やかだが確かな言葉だった。
「どうしても」
「そういうことですね」
「貴方も決してです」
 松壽丸自身もというのだ。
「家の中をです」
「乱さないことですね」
「そのことをです」
 何としてもというのだ。
「忘れないで下さい」
「はい」
 素直な返事であった、ここでも。
「何があろうとも」
「そうすればです」
「毛利家は大きな力を得て」
「そこから大きくなります」
「そうなりますか」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「いいですね、親兄弟身内同士に」
「家臣達もですね」
「常にです」
「一つになり」
「そうしてです」
「政を行い」
「戦も行なっていくのです」
 こう元就に言うのだった。
「毛利家は、さすれば」
「山陽と山陰も」
「家臣の人達が願った様に」
「そうなります、ですから」
「何といってもですね」
「家中の話を大事にするのです」
 杉大方の言葉は始終穏やかであったが強さもあった、そして松壽丸は彼のその言葉を受けてそうしてだった。
 家中のことを第一に考え家臣達とも接する様にした、それで彼等に言った。
「先の厳島のことだが」
「はい、あの時ですか」
「あの時のことですか」
「うむ、確かに願いは大きく持つものだが」
 それでもというのだ。
「しかしな」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「それは」
「一体」
「うむ、家中がまとまっていればな」
 それでというのだ。
「それに近付ける」
「では、ですか」
「先日の厳島での我等の願いもですか」
「それもですか」
「家中が一つであれば」
 そうであればというのだ。
「それも出来るであろう」
「では、ですか」
「我等はですか」
「家中で争わず」
「そうしてですか」
「まとまっているべきですか」
「左様、親兄弟は互いに争わず」
 そうしてとだ、松壽丸は杉大方に話してもらったことをそのまま彼等に話した。
「家臣達もな」
「決してですな」
「今松壽様がお話された様に」
「決して争わず」
「一つになるべきですな」
「そうあるべきじゃ、しかしな」
 それはというのだ。
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