第14節「秋桜祭」
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ほしいんだ」
「……ふふっ」
「小日向さん……?」
気付いたら、わたしは笑っていた。
加賀美くんが一生懸命、わたしを心配して言葉を選んでくれた。
それが思いの外、嬉しかった。
何でだろう……重苦しく肩にのしかかっていたものを、少しだけ忘れられている気がする。
胸の何処かが少しだけ、温かくなった気がする。
もしかして、これって……。
ピコン♪
わたしと加賀美くん、両方のスマホからLINEの通知音が鳴る。
「あ、板場さんからだ」
「こっちは紅介から。ステージまであと三十分だって」
この後、新校舎の劇場で開催するのは初となるリディアン秋桜祭の名物、カラオケ大会が予定されている。
板場さん達三人もエントリーしてるから、皆で応援しようと約束していたのだ。
「行こう、小日向さん。いい席取られちゃう前に」
「そうだね。人もたくさん集まって来るだろうし、今から移動しよっか」
「じゃあ、その……はぐれたら大変だし……」
そう言って、加賀美くんはわたしの方に手を差し伸べる。
そういえば、翼さんの復帰ライブの時も、こうして手を繋いでくれたっけ……。
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
加賀美くんの手を取ると、彼は一瞬目を大きく開いて、それから歩き出した。
ちょっと顔が赤くなっていたように見えたけど、黙っていよう。
でも、男の子に手を引かれて学校を歩くのは……ちょっと、ドキドキしちゃうなぁ……。
こうして、リディアン新校舎の劇場に、役者は揃おうとしていた。
果たしてそれは、喜劇の始まりか……それとも悲劇の幕開けなのか。
それを知る者は、誰もいない……。
「もぐもぐもぐ……チョコバナナ……もぐ……」
「あむ……はむ……カスタードいちご……あむ」
「あああ……美味しいデス〜」
「うん、幸せだね……」
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