第14節「秋桜祭」
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れば、声を荒げて抗う事も出来ない臆病者。
わたしがもっと強ければ、響の手がこの指をすり抜ける前に……。
「……わたしにもシンフォギアがあったら、響を守れるのに」
ポツリと呟いた、その直後だった。
「ひゃっ!?」
頬にピトッとくっつけられた冷たい感触に、思わず変な声を上げながら飛び退く。
「驚かせちゃったかな?」
「加賀美くん!?」
冷たいジュースの缶を手に、いたずらっ子みたいな笑みを見せたのは、飲み物を買いに行った加賀美くんだった。
わたしの頬に当たったのは、自分用に買った缶ジュースをわたしの頬に当てたみたい。
反対側の手にはわたしが頼んだ、ペットボトル入りのお茶が握られていた。
「ごめんね、驚かせて。でも、小日向さん……さっきからずっと、何か悩んでるみたいだったから……」
「あ……ごめん……」
そういえば、加賀美くんが一緒に回ろうって言ってくれたのに、わたしはずっと響の事ばっかり考えていたような気がする。
なんだかとっても、申し訳なく思えてきた。
「小日向さん……悩みがあるなら、僕でよければ聞かせてくれないかな?」
「え……?」
突然の申し出に、思わず首を傾げてしまう。
すると加賀美くんは、わたしにお茶を差し出しながら言った。
「僕にできることなら、力になりたいんだ。頼りないかもしれないけど……何もできなくても、せめて話を聞かせてくれるだけでもいいから……」
そういって、わたしを見つめてくる彼の目は真剣だった。
心の底から、本気でわたしの事を心配してくれているのがわかる。
……でも、これはわたし自身の問題だ。
加賀美くんに話したって、困らせてしまうだけだろう。
彼の気持ちは嬉しいけど、迷惑はかけられない。
「ごめん、加賀美くん。気持ちは嬉しいけど、これはわたしの問題で……」
「だったら……無理に話さなくても構わない」
「……え?」
予想外の切り返しに、わたしは少し困惑した。
加賀美くんは優しいから、わたしが断れば余計に心配する。
てっきり、もう少し食い下がって来ると思っていたから……。
「他人に話せない悩みもあるだろうし、無理に聞き出そうとするのもよくないからね」
紳士的な答えに、わたしは納得する。
そういえば、加賀美くんは女の子に対しては紳士であろうと努めている。
レディに何かを強要するなんて、紳士のやることじゃ無いもの。
「……でも……」
と思っていたら、まだ続きがあるみたい。
加賀美くんは深呼吸して、ゆっくりと口を開いた。
「もしも気が変わったら、その時はいつでも相手になる。だから、その……あんまり無理して、押し込めたりしないで……ほしい……。未来さんには、いつも笑っていて
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