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戦国異伝供書
第八十五話 四万十川の戦いその十一

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 その魚を食いつつだ、彼はこんなことを言った。
「鰹はよいのう」
「左様ですな」
「他の魚もいいですが」
「鰹はまた違いますな」
「うむ、それも刺身だとな」
 この料理にすればというのだ。
「格別じゃな」
「はい、ですから」
「こうして箸が進みますな」
「酒も」
「全くじゃ、それでじゃ」
 さらに言うのだった。
「漁師達には褒美を出すか」
「美味いものを食わせてもらった」
「だからですな」
「その礼として」
「是非な、あと民達への年貢は」
 ここで政の話をした。
「織田家のそれにする」
「低くしますか」
「そうしますか」
「その様にしますか」
「うむ、そしてな」
 そのうえでというのだ。
「ことを進めるが」
「それでもですな」
「我等としては」
「織田家に入りましたし」
「それに考えてみればな」
 これまでの自分の政をというのだ。
「戦のことが念頭にあり民達の年貢はな」
「高くですな」
「それが民達への負担になっていた」
「それで、ですな」
「それは低くしてな」
 そうしてというのだ。
「よいな」
「民達の苦労を減らし」
「その分田畑を増やし豊かになってもらい」
「そのうえで」
「より年貢を増やそう」 
 年貢の率を高くするのではなく田畑を増やしそこからの収穫によってというのだ、元親はこう言うのだった。
「ここはな」
「そうしますな」
「これからは」
「織田家の政に倣いますな」
「殿の政は聞けば聞く程素晴らしい」
 信長のそれはというのだ。
「年貢は低くな」
「田畑も街も整え」
「悪人は容赦なく成敗し」
「橋も堤も道も整え」
「実によい、その政を手本とし」
 そしてというのだ。
「土佐をよりよくする、そして殿の天下布武にもな」
「その中の一家としてですな」
「尽くす」
「そうしますな」
「天下が統一されれば泰平になり」
 そしてというのだ。
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