第80話『出発』
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っていることも、あちらではそうはいかないのだ。
「というか、車自体初めてなんじゃない?」
「そういえばそうだね。馬車くらいしか乗ったことないや」
「それはあるのか…」
異世界ゆえのファンタジーっぷりに驚きつつ、晴登は結月が自転車にしか乗ったことが無いのを思い出していた。
如何せん、うちは家族で出かけることよりも両親だけで出かけることが多いので、車に乗る機会は晴登さえも割と無いのだ。
「とりあえず行こうか。学校のバスは俺もちょっとドキドキするなぁ」
遠足とか修学旅行とか、何につけても学校行事でバスに乗り込むことは一種の想い出になる。しりとりにトランプ、果てはカラオケまで行われるその空間は、子供にとっては大いに特別な憩いの場であるのだ。
そんなバスに乗り込んだ2人は、奥から詰められているのに倣い、隣同士でシートに座る。ちなみに晴登が窓際だ。
ただし、ここで問題が一つ。
「・・・えっと結月、ナチュラルに俺の隣に座っているとこ申し訳ないけど、実は今日先約があって…」
「え、ボクと座るの嫌なの…?」
「いや、そうは言ってない! ただごめん、今回はダメなんだ…」
そう言うだけでも少し心が痛むが、何より結月が悲痛な表情をするので余計にいたたまれない気持ちになる。だがこれには事情があるのだ。
彼女はそれを察すると、残念な表情でため息を一つついて、すぐに笑顔に戻った。
「しょうがない。ならボクはリナと一緒に居るね」
「うん、ありがとう」
結月は晴登の隣から立ち上がると、手を振りながらバスの後ろの方へ離れていった。それに手を振り返して応えながら、晴登は振り返ってある人物を見やる。
「えっと・・・ホントに僕なんかが隣でいいの…?」
「一緒に回るって言ったでしょ? 今回の林間学校はとことん付き合うから」
おどおどしながら晴登の隣に座ってきたのは、例のごとくフードを目深に被った狐太郎だった。彼とは、『一緒に回るから林間学校に来て』という一方的な約束を交わしているので、これは当然の結果である。
「あの三浦・・・いや、えっと、結月…ちゃんとじゃなくていいの?」
「どうせ家でも一緒だから、今くらい大丈夫だよ」
「いつも思ってたけど、ホントに一緒に住んでるんだね…」
「え!? あ、それは成り行きというか!!」
狐太郎が興味深そうな顔をするので、晴登は慌てて補足を加える。
まずい、最近結月と居ることが当たり前のように感じてしまって、つい誤解を招く言い方をしてしまう。気をつけないと…。
「とにかく、柊君が隣で大丈夫だから!」
「それならいいけど…」
「ただ、女子の目が心なしか怖いんだよ
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