第一章
[2]次話
節約貴族
ハンス=フォン=ヘムゼルセン子爵の領地はこれといってエウロパ全域に知られている産業はなく人口もそれ程ではない。エウロパのスウェーデン人口の少ない国であるがこの国の中でもマイナーな星系とされている。
従ってあまり豊かではない、子爵もそのことは自覚していた。
それで妻のエリーザにもいつも屋敷の中で話していた。
「この星系は貧しい」
「そうですね」
「文句なしにな」
アイスブルーの目に彫のあるかなり面長な顔だ、とはいっても馬程ではなく全体的に整った感じで金髪をオールバックにしている。着ている服は青と白のロココ調のものだ。
「細君もわかっていると思うが」
「はい」
妻は苦い顔で答えた、整った顔立ちに赤い髪と緑の瞳がよく似合っている、髪の毛は長く伸ばしていて白いやはりロココ調のドレスを着ている。
「そのことは」
「それで政府も議会も苦労しているが」
「それでもですね」
「中々だ」
「財政状況は芳しくなく」
「貧しいままだ、だからな」
子爵は難しい顔で述べた。
「必然的にな」
「当家もですね」
「贅沢は出来ない」
「それが現実ですね」
「そうだ、現実はな」
それはというのだ。
「過酷だ」
「そして非情ですね」
「だからだ」
「当家も節約しないと」
「どうにもならない、私達の食事も服もな」
「衣食住全てが」
「節約だ、服も」
今二人が着ているそれもというのだ。
「長年着ている」
「そうですね」
「そしてだ」
さらにというのだ。
「皿も他の食器もな」
「古いもので」
「銀でなければならないが」
貴族だからだ、貴族それも爵位を持つ領主ともなると食器は銀でなければならない。これは不文律である。
「しかしだ」
「その食器も」
「使えるだけ使ってだ」
「その様にして」
「やっていく、駄目になってもな」
食器が使えなくなってもというのだ。
「銀だ」
「だからですね」
「一旦溶かしてな」
「作りなおして」
「そしてだ」
「また使いますね」
「服もそうしてな」
長年着ているそれもというのだ。
「仕立てなおしてな」
「着ていきますね」
「絹の服でもな」
これも不文律だ、爵位を持つ領主の服は絹でなければならないのだ。
「それでもだ」
「しっかりとですね」
「仕立てなおし」
「徹底的に着ますね」
「そしてお風呂の水もな」
「再利用ですね」
「そうする、一度入って捨てるなぞ」
それこそというのだ。
「あってはならない」
「だからですね」
「再利用だ、冷房や暖房も節約し」
屋敷の中のそれもというのだ。
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