第一章
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女子高の男子生徒
その高校は元々女子高であった、それも明治の頃からの伝統であり幼稚園から高等部までそうであった。だが日本全体を襲う少子化の影響で生徒数が減り遂に共学となった。
このこと自体は時代の流れであった、しかしこれまで女子高であったところに男が入る、このことが校内で騒ぎにならない筈がなかった。
理事長以下教職員も全て女である、それで教頭である久山栄子も不安な顔で言うのだった。
「大丈夫でしょうか」
「そうですよね」
「男子生徒が入ってきて」
「これから教職員も入るそうですし」
「そうなりますと」
栄子はその頬が少しふくらとした面長の顔で他の教師達に応えた。黒髪を奇麗にブローにしていて長い首を覆い肩の高さまで伸ばしている。細めの眉は奇麗なカーブを描いていて少し小さめの目は黒目が少し大きく蒲鉾型だ。鼻の形はよく色白で赤い唇がよく生えている。背は一六一程で四十代後半だがスタイルもいい。やや低めの声が持ち前の知性としっかりとした人格を反映していると言われている。
だが今は不安な顔で言うのだった。
「何かとです」
「軋轢が生じますね」
「やはり異なる性別の人が急に入りますと」
「どうしても」
「そうなりますね」
「ですから」
だからだとだ、栄子はさらに言った。
「私も不安です」
「私もです」
「これも時代の流れで仕方ないですが」
「それでもですね」
「不安ですね」
「これからどうなるか」
「共学になると」
栄子はこうも言った。
「おトイレや更衣室は整えました」
「そうしたところは」
「もう整えましたね」
「それで心配はないですが」
「そちらのことは」
「ですがそれでもです」
どうかという顔のままで言葉を続けた。
「果たして何もないか」
「おかしなことが起きないか」
「本当にそのことが不安ですね」
「不純異性交遊が起こらないか」
「その他の軋轢が」
「そのことは心配で不安で仕方ありません」
栄子も他の学園の教職員達も不安で仕方なかった、それこそ幼稚園から高等部までそうであったが特にだった。
高等部、難しい年頃とされている年代が集まるこちらは心配であった、それで栄子も教頭としてどうなるかと思っていた。
そんな中で入学式となり男子生徒が来た、女子生徒が八割に対して男子生徒が二割であった。その彼等を見てだった。
栄子は入学式の後で生徒会長であり学園一の才媛と言われている悠木美緒に対して生徒会室に来た時に彼女の意見を聞くことにした、これは彼女も不安に感じていたことを知っていたので共感を得たいからだったが。
美緒は顔を赤くさせてこんなことを言った、昔ながらのセーラー服の制服がよく似合う黒の首の付け根の高さで切り揃えた髪と楚々とした顔
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