第二章
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「美味しいわ」
「そうでしょ、関東のおつゆじゃないけれど」
「それでもなのね」
「おつゆが美味しいの。というかね」
「というか？」
「関西のおうどんのおつゆはどんどん飲めるから」
娘にこのことも話した。
「東京のおつゆと違ってね」
「関東のおうどんだとおつゆは」
「あまり飲めないでしょ」
「辛いから」
その色が示す通りにだ。
「ちょっとね」
「そうでしょ、けれどね」
「こっちではなのね」
「飲めるから」
だからだというのだ。
「綾ちゃんも飲んでね」
「それじゃあ」
「お母さん生まれは栃木だけれど」
「関西のこと知ってるのね」
「何度か旅行で来てたから」
それでというのだ。
「知ってたからね、今もね」
「私にお話出来るのね」
「そうよ、あと関西じゃお蕎麦よりもね」
「おうどんなのね」
「だからお蕎麦屋さんじゃなくてね」
「おうどん屋さんなのね」
「そう呼ぶことが多いのよ」
母は自分のきつねうどんを食べつつ綾に話した。
「そのことも覚えておいてね」
「わかったわ、同じ日本なのに」
それでもとだ、綾はうどんを食べつつ思った。
「かなり違うのね」
「食べものがね」
「本当に」
「鰻だってそうだし」
「鰻もなの」
「関東じゃ背中から切るけれど」
鰻の調理の時にというのだ。
「関西じゃお腹から切るの」
「そこも違うのね」
「ええ、そのことも覚えておいてね」
「わかったわ、本当に何もかもが違うわね」
同じ日本でもとだ、綾は思った。そう思いつつ今はうどんを食べた。
そして神社のお祭りにクラスの友人達と一緒に行った時のことだった、クラスメイト達とはすぐに打ち解けてよく遊ぶ様になっていてそれで今も一緒にお祭りに来たのだ。
その時にだ、綾はある出店の前で首を傾げさせた。今着ているのは赤地で鯉模様の奇麗な浴衣である。
「イカ焼きよね」
「そやで」
「これイカ焼きやで」
「めっちゃ美味しいで」
「あの、何か」
そのいか焼きを見てだ、綾は友人達に言った。
「お好み焼きみたいだけれど」
「いやいや、これがや」
「こっちではイカ焼きやで」
「関西やとな」
「そやねんで」
「イカ焼きっていうと」
どうかとだ、綾は友人達に今度はこう言った。
「イカ自体をタレ付けて焼いた」
「あれは姿焼きやろ」
「あっちの出店で売ってるで」
友人達は今自分達がいる場所から少し離れたところの出店の方を見てそのうえで綾に明るく話した。
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