第一章
[2]次話
寿司屋になれ
仁志三千男は中学校で数学を教えている、色黒でやや小柄でややバタ臭い顔をしていて髪の毛は黒く縮れている。年齢は四十代半ばだ。
その彼がよく知り合いにプライベートの場で笑って言っていた。
「俺の実家寿司屋だろ」
「ああ、そうだよな」
「お前の親父さん寿司屋だしな」
「お兄さんが跡継いでるな」
「それで今もやってるよな」
「この寿司が美味くてな」
それでというのだ。
「いつも繁盛してるよ」
「それはいいことだな」
「やっぱり寿司って美味いしな」
「時々食いたくなるよな」
「いいご馳走だよ」
「だから何時でも行ってくれよ」
自分の実家の店にというのだ。
「そうしてくれよ」
「そうさせてもらうな」
「是非な」
「金がある時にな」
「そうさせてもらうな」
「それでな」
仁志は知り合いの者達にさらに話した。
「学校の生徒もそれ知ってるんだよ」
「お前の実家が寿司屋だってか」
「そのこと知ってるか」
「そうなんだな」
「それでよく寿司屋になればどうかって言われるんだよ」
仁志自身もというのだ。
「学校の先生じゃなくてな」
「ああ、そういうのって言われるよな」
「よくな」
「実家が商売やってるとな」
「先生辞めてそっちに行けとかな」
「だよな、そう言われた時は軽く返すけれどな」
その都度そうしているというのだ。
「言われて悪い気はしないな」
「軽い冗談だしな」
「生徒のな」
「それにお前の職場中学校だしな」
「中学生の軽い冗談だな」
「そう言うのは」
「ああ、笑って返してるさ」
仁志は実際に笑って話した、彼はよく知り合いにこうした話をした。そして彼の授業を受けている生徒達はというと。
彼の授業の前に教室でこんなことを話していた。
「仁志の言ってることわかるか?」
「いや、わからねえよ」
「あいつ何言ってるんだ?」
「あいつの授業わからねえよ」
「黒板に向かって棒読みで言ってるだけだろ」
「公式とか書きながらな」
「あいつの授業わかる奴いないだろ」
眉を顰めさせて話していた。
「塾の授業の方がわかりやすいぞ」
「予習復習しないと何言ってるかわからないぜ」
「あいつの授業聞いても本当にわからないからな」
「もう聞くだけ無駄だろ」
「塾で聞くか自分でしないとな」
そうしなければというのだ。
「本当に駄目だな」
「あんあな下手な奴いないぜ」
「あれずっとらしいからな」
「ああ、みたいだな」
「先輩言ってたよ」
かつて仁志の授業を受けた彼等の上級生達がというのだ。
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