第一章
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七人同行
近頃土佐のある道で不穏な話が出ていた、その道を通っている時に不意に倒れて死んでしまう者がいるというのだ。
その話を聞いてだ、藩主の山内容堂は言った。
「妙な話であるな」
「いえ、妙な話ではありませぬ」
容堂の側近である吉田東洋は主に真面目な声で話した。
「これは」
「どういうことじゃ」
「何であるかはわかりました」
「お主にはわかるのか」
「はい」
東洋はその強い目を放つ顔で話した。
「その道のことは」
「ではじゃ」
容堂は常に飲んでいる酒が入っている杯の動きを止めて東洋に問うた。
「一体何じゃ」
「はい、七人同行でしょう」
「七人同行、というと」
その七人という言葉を聞いてだ、容堂は東洋に言った。
「七人みさきと同じ様なものか」
「数は同じですが」
「また違うか」
「あれはこの土佐のある国人が戦っている国人の一族を皆殺しにして祟りを恐れて祭ったものでありましょう」
「うむ、そう言われておるな」
土佐では七人みさきはそうしたものだと言われているのだ。
「確か」
「そうしたものではなく」
「別のものか」
「はい、数こそ同じですが」
それでもというのだ。
「また違いまする」
「そうなのか」
「これに行き当たると死ぬのです」
「だからか」
「あの道では人が死ぬのです」
東洋はまた言った。
「祟りで」
「そうであったか」
「それもその場で」
「そうか、しかしな」
ここまで聞いてだ、容堂は言った。
「このこと放ってはおけぬ」
「それで民が死ぬのなら」
「百姓や町人といえど民であり人である」
武士しかも上士より身分は下であるがというのだ。
「それならばじゃ」
「護らねばなりませぬな」
「それが藩主の務めであろう」
容堂は東洋をしかと見つつ彼に問うた。
「そうであろう」
「はい、さもなければです」
まさにとだ、東洋も答えた。
「武士そして何よりも」
「藩主ではなかろう」
「こうしたことを放っておけば」
「無闇に人が死にな」
「藩主としてあってはならぬこと」
「全く以てじゃな」
「ですから」
それ故にというのだ。
「この度はです」
「何とかすべきであるな」
「それがしもそう思いまする」
「全く以てその通りじゃな」
「それでは」
「うむ、まずはじゃ」
容堂は今も飲んでいない、そのうえで登用に言うのだ。
「わし自らじゃ」
「その道に行かれますか」
「そうしてな」
そのうえでというのだ。
「どういったものか見てじゃ」
「そのうえで、ですな」
「ことをどう収めるか」
「考えられるのですな」
「そうしようぞ」
「わかりました、では」
東洋は己の主の言葉をこ
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