第三章
[8]前話
「箱根までな」
「それでは」
「しかしな、妖怪よりもな」
ここ源内は痛そうな顔になってこうしたことを言った。
「身体の節々が痛えのはな」
「嫌でありますか」
「ああ、病気の方がな」
「身体を冷やし過ぎたのでは」
「それでリウマチにでもなっちまったか」
「そうではないかと」
「ったく、人間の身体ってのは難儀なもんだな」
源内はこうも言った。
「ちょっとしたことでな」
「痛むものですな」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「難儀だな、早く箱根に入ってな」
「温泉で温まって」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「じっくり養生したいものだよ」
「ではそれがしもお供をして」
「箱根の湯を楽しむかい」
「時々でも風呂なり水浴びをしなければ」
そうしなければとだ、高山は源内に話した。
「身体が汚れて」
「臭くもなるしな」
「人に嫌がられるので」
「だからだな」
「ここはです」
「箱根の湯で垢も汚れも落とすか」
「そうします」
こうしたことを話してだった。
源内と高山は後追い小僧を見るのを止めて箱根に向かった。そしてそこでゆっくりと湯を楽しみ酒や馳走も楽しんだが。
源内は遊郭で遊んだ後で高山に共に酒を飲みつつこんなことを言った。
「さて、後でどうなるか」
「鼻が落ちるとですか」
「そうなるかもな」
「全く、そうなるかも知れないとわかっていながら」
「ははは、おなご遊びは鼻が落ちてもってな」
源内は高山に箱根の酒を飲みつつ話した。
「言うしな」
「だからですか」
「ああ、おなごはな」
これはというのだ。
「箱根でもな」
「楽しみますか」
「そうさ、これで身体が痛くなって動けなくなってもな」
花柳の病で脊髄までやられてそうなってもというのだ。
「その時はその時は」
「それがし花柳の病はあやかしより怖いと思いますが」
「そうかもな、後追い小僧は何もしねえがな」
「病はそうはいきませぬ」
「身体をぼろぼろにしてくれるからな」
「はい、ですから」
「それはわかってるさ、けれどな」
「それでもですか」
「これと酒は止められねえってな」
こう言ってだった、源内は今は飲んだ。そうして高山にその店の話をしていった。その顔は実に楽し気なものだった。
後追い小僧 完
2020・1・13
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