情熱の舳先
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なたサイトが何処にいるか知らないかしら?」
口元は弓幹ゆがらの如く歪んだまま微動だにせず、見開いている様にも見えないのに白目が虹彩の四方を取り囲み、明るい赤紫の長髪が蛇の様に揺らめいている。
それが一歩を踏み、二歩を踏み、手をこちらに伸ばしたところでルイズであると気付いて。
「ちょっと? なんで 逃げるのよ? 待ちなさい」
キュルケは本能的に踵を返し、学生寮へ駆け込んだ。
悲鳴も出なかった。
むしろ、声を出せることも、息ができるのかすらも、引き攣った呼吸音が聞こえるまで忘れていた。
「待て?」
「ひ……!?」
よく通る声に思わず振り返った自分を呪い、寸で叫ばなかった自分を褒め称えたい。
何故姿も見えないのに耳元で声が聞こえるのか。
キュルケは人生初めての必死の全力疾走を体験しつつ、助けを求めてタバサの部屋を目指した。
五階。
到達するや否や脇目も振らずにタバサの部屋へと向かい、勢い良くドアを押し、
ガッッ
「……………………え」
軽い絶望を覚えつつ、もう一度押したり引いたりを繰り返してみて。
ゴカッ
「ちょっ、えっ」
ガタタタタタタタッ
「鍵!? タバサーッ!?
タバサ開けて開けて開けてぇええええ!?」
中の気配の有無なんぞに気付けるわけも無く、来た道からコツコツと響く足音&クスクス聞こえる笑い声に更に焦って、視線を階段に固定したままドア連打。
パニック状態もいいとこである。
なんの恐怖舞台グランギニョルかこれは。
一向に開く気配のない扉と、ついに視界に入った桃色に。
「こ、こうなったら!」
キュルケは形振り構わず思いっきり扉に体当たりし、部屋の中へと転がり込むことに成功した。
「きゃぁ!?」「のぁーっ!?」
ただし、対面側の部屋に。勢い良く扉を開いた拍子に、誰かふっ飛ばした気がするが正直ソレどころではない。
「キュ、キュルケ!? なに勝手に入ってきてるのよ! ってちょっと!?」
窓が閉まっているのを見て取るや否や、キュルケは眼に留まったベッドに飛び込み、シーツを頭から被って息を殺して。
「ちょ、こら! 人のベッドに何してるのよ!?」
「あたた……そ、そうだとも!
そもそもまず何か言うことが
「ここかしら?」
ひッ!?」
一つ気付いた事がある。
しまった、隠れてどうする。
これでは逃げ出せないではないか。
「あっ!」
「ちょっとこれ貰うわよ」
「あ、こら! それはぼくの……あ、なんでもない。う
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