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fate/vacant zero
情熱の舳先
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 それらを練り合わせて、現在この部屋で起こっていそうな風景を妄想して……。



 コメカミ辺りで、血管が音を立てて弾けた。



「節度を守れと何度言わすかこのバカ犬ぅうううううううううッッッ!!

Va裁──「ひぃいいぃいっ!?」──っ。

……え゙?」             



 扉を蹴破り、妄想の光景に罰を与えるべく拘束具の呪を唱えようとしたルイズは。

 その瞬間、眼に映ったアリエナイ光景に凍りついた。

 突然開かれた扉に背筋を引き攣らせて振り向いた人物。


「る、るるるルイズ!?」


 例の水兵服に身を包み、スカートをはいて、さっきまで間違いなくこの部屋から聞こえていた声で、どもりながら名を呼ぶ、金髪の── 少 年 。


「ま……ま、ま、マリ、コルヌ?」

「ゎ、わわわ」


 完全に石化しているルイズの脇を慌てふためいて通り過ぎようとしたマリコルヌ。

 だが、慣れないスカートに足を縺れさせ、その初速のままもんどりうって壁に衝突した。


「んあっ!
 ……あ、にゃぁ! ふぁ!?」


 そのまま転がって足元まで戻ってきたマリコルヌを、ルイズは咄嗟に背中を踏んづけた。

 ついでに、扉を勢い良く叩き閉める。

 まかり間違ってこんなモノが外に出たら、瘴気で学院が汚染されかねない。

 というか、これが逃げるように去った後で、こそこそ出て行くところを誰かに見られでもしたら死にたくなる。

 そんなわけで、正しく汚物のように妙な嬌声を撒き散らすマリコルヌを踏みつけつつ、ルイズはついさっきまでこれが此処でなにをしていたのかに見当がついた。


 さっきコレが立っていた正面には今、非常に弱気そうな骨ばった細身のスカートをはいた少年と、その骨皮筋少年に踏みつけられて恍惚の表情を浮かべている──思わず足に力を込めてしまった──髪を長く垂らしたぽっちゃりとした可愛らしい少女の姿を写す、古臭い姿見の鏡があった。

 醜いものを美しく、美しいものを醜く映しだす、『嘘吐きの鏡』という魔法道具アーティファクトである。

 姿が美しく映ろうが醜く映ろうが問答無用に割られそうになるので倉庫に死蔵されているという、ある意味で曰く付きの品だと聞いたことがあった。

 どうやらマリコルヌはこれに自分自身を映して、一人悦に浸っていたようだ。

 鏡の角に頭でもぶつけたんじゃなかろうか。


「──で? なんであんたがその服着てるのよ」


 蔑む眼で見下ろしながらルイズは問うた。


「いや、あんまりにも可憐過ぎて……で、でも、ぼくには着てくれる人が居なくって……」

「それで、自分で着てたって?」

「そう
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