免避れし者たち
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その日ひもお姫様ひめさまは憂鬱ゆううつでした。
昨日きのうも今日きょうも一昨日おとといも。
母君ははぎみの誕生会たんじょうかいに託かこつけて。
同おなじような顔かおした狸たぬきや狐きつねや魑魅魍魎もののけが。
来くる日来ひきたる日ひを狙ねろうては、実も失みなき飾かざりの言葉ことのはを。
賤あさましくも彼女おひめさまに添そえようとするのです。
きっと明日あしたも来くるのでしょう。
一日二日いちにちふつかなら我慢がまんだってしていられましたが、はや既すでに時ときは七日なのか過すぎ。
この園遊会えんゆうかいは十四じゅうしの夜よるを過すごすのです。
昼間ひるま、虎とらと女豹めひょうに連つれられた友達ともだちも。
一日四度いちにちよんどの催もよおしの間あいだは傍そばに居いることもままなりません。
今日きょうまではなんとか堪こらえました。
夜よるの間あいだは、二人ふたりして楽たのしく過すごせていました。
ですが今宵こよいは一人ひとりきり。
友達ともだちの女おんなの子こは、家族水入かぞくみずいらずで過すごしている事ことでしょう。
一人ひとりぼっちのお姫様ひめさま。
それはとても退屈たいくつで、けれど人ひとを呼よぶ気きにもなりません。
彼女かのじょは気晴きばらしに気紛きまぐれに。
この夜よるは、会場かいじょうからも良よく見みえていた、大おおきな湖みずうみを目指めざすことにしたようです……。
Fate/vacant Zero
第三十一章 免避まのがれし者たち
「……ぬ……ぶ」
目蓋に降る強い眩しさと、開いた口に有無々なくぶち込まれた甘みと旨みと仄ほのかな塩気を感じ、ジャンはようやく目を覚ました。
すっと目を開けば天井が映り、口の中のものを舐ねぶればそれが木の匙さじであることに気付いた。
……匙?
そういえば、ここはどこだろうか。
ついさっきまで、トリステインの空に居て、憎々しい小僧と戦っていたような気がするのだが。
「ん? 意識が戻ったみたいだね」
見知った声がした。
「その声。土塊つちくれか?」
声のした方に首を傾けると、匙を持つ手と緑色の髪が見え、
「ッ――」
捻ひねった首を中心に、全身を内からしこたま殴られたような痛みが襲う。
「ああ、まだ動かない方がいいよ。
随分とくまなく全身がガタついてたんでね。
『治療ケア』と『治癒ヒール』を使える連中をかき集めるのは骨が折れたよ
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