免避れし者たち
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そんな女が、クロムウェルの秘書を務めている理由を垣間見た気がして……ふと、自分の感じていた心の棘に得心がいった。
この女は、どこか、あの小僧に――
「今やアンリエッタは『聖女』と崇められ、なんとトリステイン久方ぶりの女王に即位するという。
だが、つまりはそれも我らの好機」
いつの間にか思考に嵌っていた視線をさっとクロムウェルに戻せば、何やら秘書に目配せをしている所。
「王国にとって、王は国と等価です。
女王を手中の物とすれば、自然と国も秘宝もこの同盟レコン・キスタとできるでしょう」
クロムウェルはにこりとした笑みで頷くと、踵を返しながらこちらを見た。
「それではワルド君、ゆるりと養生してくれたまえ。
君の義手が出来上がる頃には、決着がついているだろう。
その時は、君も晩餐会に出席してくれたまえよ?
なにせ――この聖邦復興同盟レコン・キスタに『聖女』を迎え入れる、婚姻祝賀会なのだから」
それだけ言い残し部屋を立ち去るクロムウェルと秘書の背を見やりながら、軽く頭を揺らしておく。
……ああ、身を起こすだけでも疲れるとは。
「婚姻祝賀? 誰と結婚させようってのさ、あの男は」
ある種で珍しく苛立たしげに、フーケが吐き捨てている。
いや、考えるまでもないだろうそれは。
「あの男の手駒に誰が居るのか忘れたか?
案外、前回の奇襲より遥かに楽にことは進むやもしれんな」
あの王女……もとい、女王か?
あの女王には、“私”が聊いささか多すぎる。
考える旗は、さぞかし振り難かろうが。
……まあ、俺には。もう、どうでもいいことか。
「どうしたんだい?」
「? 何がだ」
「そんなに震えて。布団が足りなかった?」
……気付けば、生地端を握る手が、小刻みに揺れていた。
「……そうかもしれんな。すまんが、スープを ん?」
「……空だね。
ちょっと待ってな、すぐ持ってくるよ」
かちゃりと皿を掴み、フーケは急ぎ足で部屋を出ていった。
と、と響く木を踏む音が次第に遠くなるにつれ、手の震えは小刻みに大きくなっていき……やがて音が聞こえなくなると同時に、爪が掌の皮を食い破った。
「……れ。
――のれ、おのれおのれおのれぇええ!
まだ、まだ足りぬのか!
スクウェアでは、ただのメイジの身では、あの“槍”に一矢報いることすらままならぬというのか!
どこまでだ!?
いったいどこまで強くなれば、俺はあの“槍”を討ち滅ぼせる!!」
力が足りない。
幾ら数多の雑兵を掻き集めようと
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