免避れし者たち
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槍』」
唐突に零れた槍と言う単語に眉を呻かせ、
「――そういえば、始祖の息子と伝えられる初代ガリア王、アトスの手記の内に、興味深い記述があったな。
兄弟マジ喧嘩していたら始祖が突然掌に小さな光る星を生み出し、気付いた時には見渡せる限りの範囲にあった武器という武器が灰になっていたそうな」
一瞬後には後頭を枕に叩きつける羽目になった。
「……確かにアレは流星のようにも見えましたが……本当に始祖の息子の著作ですかそれは。
えらく率直というか庶民的というか威厳が無いというか」
「変わり者だったらしいからね、アトス王は。
王の后も出自が知れぬ身だったそうだし、らしいと言えばらしいだろう?」
そういうものだろうかと頭を抱えつつ、また少し始祖への印象を愉快な形に歪ませる。
「とにかく、謎を謎のままにしておくのはよろしくない。
気分も良くないが寝覚めが最悪だ。
そうだろう、子爵」
言われてみれば、クロムウェルの目周りにはかなりくっきりとした隈取りが出来ている。
なるほど。
「仰る通りですな」
実際問題として、あの魔法は使い手が一人居るだけでも軍隊にとっては死活問題となるのだ。
アレほどの才能がごろごろ居ることは考えられないが、それでももし、万が一もう一人使い手が居るなどということになれば。
……ぎしりと、失われた腕が軋んだ気がした。
そんな悪夢、考えたくも無い。
「聞けばトリステイン軍を率いていたのは、アンリエッタ姫だそうだね。
トリステインの嫁入り道具の一つかと思っていたが、どうしてこうしてやるではないか。
かの魔法のことといい、白い姫君は王室に眠る秘宝の正体を暴いたのやもしれぬな」
「王室の……秘宝、ですか?」
「そう、秘宝だ。
先の話題にも出したが、始祖の子らはこのハルケギニアに王室を築いた。
ガリア。フランク――今のトリステインだな。そしてこのアルビオン。
この三王家ともう一つに、始祖の秘密は分けられた。
……だったな、ミス・シェフィールド」
「はい、閣下。
今は亡きアルビオン王家には、『風の宝珠ルビー』ともう一つ、始祖の秘宝が眠っておりました。
しかし、王子が持っているはずの『風の宝珠ルビー』は何処へ消えたか行方も知れず。
もう一つの秘宝も、未だ解析の途中で詳細までは判明しておりませんわ」
秘書は淀みなくクロムウェルに答えると、陶然とした捉えどころのない笑みのまま一歩を下がった。
惹きつけられるほどの美貌、というわけではない。
強い魔力を感じるわけでもなく、そもそもメイジですら有る様でもない。
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