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fate/vacant zero
免避れし者たち
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を顰めたフーケは、だがすぐに顔を逸らしてスープを手にした。

 そうかい、と呟く声が微かに聞こえた。

 自分でもあまり触れたくはない傷だ。

 聞かなかったことにしようとするのは非常に有り難いと――



 コンコンとドアノックの音がして、誰かが部屋に入ってきた。



「おお、子爵。意識が戻ったようだね」


 つと聞き覚えのある声に視線を移せば、秘書シェフィールドを従えた見覚えのある笑みを湛えたクロムウェル皇帝の姿が見えた。

 あれだけの敗戦の後でも普段通り笑んでいられるとは、大物なのか余程の馬鹿なのか。

 はたまた。



「……見苦しい姿をお見せします、閣下。
 申し訳ございません、一度ならず二度までも失態いたしました」

「よい。君の失敗が敗戦の原因ではないだろう?」


 傍らの秘書シェフィールドが頷き、何処か癇かんに障さわる声で報告書を読み上げる。


「なにやら、空に現れた膨れあがる光に、我らが艦隊は風石を砕き散らされたとか」

「つまり、未知の魔法を敵に使われた。
 これは計算違いというものだよ、子爵。
 誰の責任でもないことだ。
 強いて挙げるにしても、戦力差に驕おごり、劣勢に至った場合の方針を考えていなかった我々指導部の責任だ。
 少なくとも現場の責任ではないと余は考える。

 今はゆっくり傷を癒したまえ、子爵。
 腕の方も、生身と相違無く使える精巧な代物を作らせておるのでな」

「閣下の、慈悲の御心に感謝します」


 差し出された手に唇を落としながら、ワルドは気に掛かっていたことを問う。

 今も話題に挙がった、あの未知の光の魔法についてだ。

 水や土では考えられず、火の熱さも風の動きも感じなかったあの光の一筋。

 あれは……あれもまた――


「あれも……『虚無』なのでしょうか。
 閣下の仰られた『虚無』とは相容れませぬが、あの光、他の四系統では考えられませぬ」


「余とて、かの始祖ほどに『虚無』を理解している訳ではないよ。『虚無』は、いまだ数多の謎に覆われておる」

「歴史の衣が、その全貌を闇の彼方へ葬り去ろうとしております故」


 控えた秘書が、苦笑するクロムウェルを補足する。

 何か、何処か引っかかる物言いだ。


「歴史。ああ、歴史はいい。
有り余る謎は時間と退屈を奪ってくれる。

余は、それに深い興味を抱いておってな。
たまに暇を見つけては、古の書物を紐解いておるのだ。

初代トリステイン王の謎のベール。

 このアルビオンは如何にして浮遊大陸となったか。

 ガリア王家の象徴たる青髪の由来。

 始祖の盾と呼ばれし聖者エイジスの用いし『
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