第四部
水の哀悼歌
湖沼の国の姫陛下
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昔々むかしむかしの御噺おはなしです。
湖みずうみと沼ぬまの広ひろがる国くにに、二人ふたりの女おんなの児こが住すんでいました。
一人ひとりはとてもお転婆てんばで、夢ゆめに夢見ゆめみる悪戯いたずら好ずきのお姫様ひめさま。
一人ひとりはとてもお淑しとやかな、猫ねこを被かぶった負まけず嫌ぎらいの貴族きぞくの子こ。
二人ふたりはたいへん仲なかが良よく、あまり度々たびたびは会あえませんでしたが、会あえる間あいだはそれはもう毎日まいにちのように楽たのしく遊あそんでいました。
この御噺おはなしは、とある日ひのこと。
お姫様ひめさまの母君ははぎみの誕生日たんじょうびを祝いわう園遊会えんゆうかいで、二人ふたりが再会さいかいしたところから始はじまります……。
Fate/vacant Zero
第三十章 湖沼コショウの国の姫陛下
週頭の本日、王都城下町ブルドンネ街は王軍の戦勝帰還パレードを迎え、熱く騒がしくそこかしこで盛り上がっていた。
先頭を行くは白馬ユニコーンに牽ひかれるアンリエッタ王女の白い馬車。その後ろには高名な貴族たちの馬車が数珠を為す。
両脇を魔法騎士隊の三幻獣に警護されたその馬車は、それでいて何どれもなかなかに開放的だ。
狭い街路に詰め掛けた満載の観衆からも、通り沿いの建物の窓や屋根から見下ろすある意味無礼講ならではの不届き者からも、程度に差異はあれその姿を確認できるフロントフリーな屋根つき馬車。
普段ならばまず拝見できないその全身像を目撃できた市民たちは、沸き立つような歓びを口々に投げかける。
「アンリエッタ王女万歳!」
「トリステイン王国万歳!」
中には気の早い者が叫んだ「アンリエッタ女王陛下万歳!」が感染している一角もあり、その熱狂の程は昨今のアンリエッタの人気高さを諷刺している様でさえあった。
それもそのはず、あのアルビオン親善艦隊の奇襲に始まった、タルブ大草原を舞台としたラ・ロシェール防衛戦において奇跡を勝ち取ってから、まだ一週間と経過していない。
数も士気も錬度も勝まさっていた敵軍を打ち破った王女アンリエッタの人気は、今や『聖女』とまで崇められるほどに高騰していた。
このパレードが終わって入城次第、アンリエッタは戴冠式を迎える。
母、太后マリアンヌより王冠を被される、儀式的式典だ。
枢機卿マザリーニによって提案されたこの式典には、大臣を含めた宮廷貴族の殆どが賛同した。
結婚式を三日前に控えていたゲルマニアでさえ、渋りながらではあるがこれを受け、皇帝と王女の婚約解消を宣言した。
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