第四部
水の哀悼歌
湖沼の国の姫陛下
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ュウノス。
始祖の入滅後にロマリアから広まった魔法ルーン語……近世魔法語レムスィッシュとは違う、始祖がお使いになられた雛形の呪術ルーン言語のことよ。
祈祷書はその言語で綴られているの」
「文字も綴りも別物。
まだあなたには、見えても読めない」
えー、と才人は不満げに肩を落とす。
その姿に安心し、
「だから、ルイズ」
「ん?」
だが、まだ早いゆだんたいてき。
「わたしが読む。どうやって読めばいい?」
「え゙」
本の虫が、既に懐で鎌首を擡もたげていた。
唐突になに言い出すのこのちびっこ、と顔を怖れ見た。
目が、とても爛々と朱るく光ってるような錯視が見えた。
なんか憑いてるような気がして、正直ちょっとこあい。
油断した瞬間、目の光に体を突き破られそう。
「――ちょ、ちょっと待ってタバサ。
あの、その、えっと。
そ、そう! その、この本の最初のページに条件が書いてあったんだけど!」
よし。
「なんかこの祈祷書、一度読んだ人が出たらしばらくその人にしか読めなくなっちゃうみたいなの!
だからその、悪いんだけどまた今度でもいい!? いいわよね!?」
誤魔化そう。
え、と後頭に声が掛かる。
タバサが目をぱちくりさせて戸惑った一瞬の隙を突いて。
才人の手を引っ掴んだルイズは、扉を蹴破り廊下を駆け抜けていった。
扉に掛けられた『凪サイレント』が幸いして、誰もその音を聞きとがめることはなく。
こうしてタバサの部屋での尋問会は、誰に知られることもなく終了した。
「っ、おい、ルイズ!
離せ、離せった、らっ!? いってえッ!」
ルイズはそのまま駆けに駆け、自室まで疾ってようやくその足を止めた。
その間ずっと転まろび引き摺られていた才人は、手を離された途端床を滑り沈み、床に触れた皮膚が熱く痛んですぐさま飛び起きた。
顔が擦れてじんじんする。
あと、一瞬しゃちほこみたいな体勢になったのは内緒だ。
「っつぅうぅ……あー、もう。
どうしたんだよいきなり走り出しやがって。
杖、タバサの部屋に置きっ放しちまったじゃねえか」
「う。わ、悪かったわよ」
悪かったとは思っている。
思ってはいるけれど、
「怖いものは怖いんだもの。
……しょうがないじゃない」
賭けてもいい。
あれは獲物を狩る目だった。
「はぁ。後でタバサに謝っとけよ?
なんか油揚あぶらげ攫われた鳶とんびみたく悲しげな表情にな
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