第四部
水の哀悼歌
湖沼の国の姫陛下
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考え、すぐに何の意味もない仮定と気付く。
もし傍に居てくれたなら……そもそも戦いなど、王位など望みも考えすらもしなかっただろう。
だって、ここに彼が居たなら、心がこんなに虚しくなることもなかっただろうから。
まあ、こんな心境で誓約文のりとなど考えようものならさぞかし血塗られていそうなものになってしまったでしょうけれど、と溜息を一つこぼして、座席横に置かれた書簡入れへと目をやった。
中身は、一枚の羊皮紙。
あの勝利の最後の功労者となった元トリステイン空軍残兵部隊、現在タルブ領にて復興作業中の彼らを束ねていた、女騎士からの報告書。
――奇跡最大の立役者、所属不明の『騎士』についての目撃報告書だ。
捕虜となることの出来た“幸運な”竜騎士の片割れ、意識のあった方の目撃談。
黒い猛禽は羽ばたくことなく俊敏に飛び回り、出会い頭に強力な土系統の投擲槍スピアを複数放っては、竜を生卵の如く砕き散していたらしい。
捕虜自身はわけのわからぬままに小柄な風竜に落とされたらしく、強力な氷の吹息ブレスやら吹雪アイスストームやら謎の空中爆発やらに次々墜とされていく仲間たちを落ちた大地から見上げて、ようやく自分が何をされたか気付いたそうだ。
それから、レキシントン号の伝令係だったという空兵捕虜による目撃談。
猛禽は颱暴弾ショットガストの至近炸裂を凌ぎ、風竜の騎士は一度は落ちたが自力で飛行することで戦場に復帰し、猛禽と共に彼らの竜騎士隊隊長――あの裏切り者らしい――を撃墜したとか。
余談だが墜ちていった隊長の行方も知れなくなっているようだ。
をのれ……コホン。
さて。この部分だけでもよく分かるが、まず間違いなくこの二騎はトリステインの軍部ではない。
こんな冗談のような騎士が軍部に居たならば、王国艦隊は壊滅の憂き目を見ることもなかっただろう。
――そしてこの報告書を綴った女騎士は、この騎士らとの接触コンタクトに成功した。
正確にはあちらからの申し出だそうだが、要約すると『飛ばすための材料が尽きたので、あの鳥を魔法学院まで運んでほしい』のだそうだ。
申し出をした青年はあっけらかんと『使い魔』と名乗り、賃金を支払っていた小柄な仮面騎士はえらく低い声で口も動かさず『地下水』と名乗っていたとか。
騎士たちはそのまま風竜で去ってしまったが、時期が時期なだけに運送をすぐ行ってもよいものかと、裁可を待つ形で書類は綴じられていた。
既に運ばせはしたが、とりあえず書類は最初の書類仕事で送還するとして。
……謎の爆発。小柄な風竜。そして魔法学院。
極め付けに、使い魔と名乗る青年。
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