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fate/vacant zero
新星
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まいました。

 背中から落ちたものだから、頭まで打ってしまったようです。


「ぁいったぁ〜……もぅ、何なのね! きゅい!

 きゅい?」


 頭を擦さすりながら起き上がったシルフィは、空を飛んでいたときとは明らかに何か様子が違うことに気付き、首を傾げました。


「……あれ? おフネは? おねーさまは?」


 頭上にぽっかりひらけた空には、おにーさまの乗った変な鳥以外に何も飛んではいなかったのです。

 きょろきょろと辺りを見回してみると、少し離れた場所でルイズが地面にへたり込んでいるのを見つけました。

 表情は見えませんが、なんだか空を見上げたまま固まっています。


「えーと……るいず?」


 シルフィは、何か知っていそうな彼女に、主人が何処へ行ったのか訊ねてみることにしました――





「…………」


 ルイズは自らの解き放った魔法の痕、中空の空を眺めながら、そのあまりの威力にただ戦慄していた。

 確かに魔法は放たれ、光はアルビオンの艦隊を呑み込み、堕ちてゆく艦々もこの目で見届けたしその着地の震動だって全身で感じた。

 だが、それにしたってあんまりにも現実味が足りない。

 もしその瞬間にだれかがこれは夢だと教えてきたら、それはもう砂に水を落としたように信じたことだろう。

 それほどこの魔法、『爆砕エクスプロージョン』は圧巻だった。

 狙った情報を持つ物質を無条件に破砕爆散するという異様な効果も。

 六隻の艦隊全てを包み込んでなお余りある効力範囲も。

 見えてさえいれば間違いなく届きそうなトチ狂った射程も。

 一撃に込められるその莫大な精神力も――その何もかもが異常。


 これが、『空vaco』。

 これが、『虚無zero』。


 まだ鼓動が収まっていないことを感じ、跳ねる自分の想いを思い出し、少しずつ、だが確実にルイズはその感覚を心に刻んでいく。

 これこそが――



「――ルイズ?」



 ふと、聞き覚えのある聞きなれない童女の声がした。

 確かこの声は、


「シルフィード、よ、ね? 何?」


 振り向き、確かにそこに居てこちらを見下ろしている風韻竜と目を合わせた。


「ルイズ、ルイズ。お姉さまどこに行ったか知らない?」

「ああ、タバサだったら……」


 つい、と視線を上へむけると、一発で見つかった。

 かなり遠い上空を、ゆっくりとした速度でくるくる廻っているそれを、


「あそこよ。多分、ね」


 指で示して、視線を戻した。



 ……なぜだろう。

 じっと見られている。


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