新星
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かったのは、艦隊直下にて移動を開始していたアルビオン降下部隊だった。
「艦隊が、レキシントンが墜ちるぞ! 下がれ、下がれぇええ!」
唐突に消失した上空の光の球を見ていた誰かが。
少しずつ加速しながら視界の中で大きくなるその艦底に気付いた誰かがそう叫んだ途端、降下部隊は雪崩の如く一丸となって元来た方へ走り出した。
そりゃそうだろう。誰だって潰れたくはないものだ。
誰もが必死に逃げ、だが時間という物は有限で。
その瞬間は、重力の理のままに訪れた。
それは大地を穿つ槌の音か、それとも大地に砕かれる槌の音か。
重ねて六度の地震と、幾らかの不運なる兵士の途切れた絶望の叫びと共に。
「バカな……」
新生アルビオン共和国親善艦隊と名乗ったそれらはこの瞬間、ただの一隻の例外も無く、この世の空から姿を消した。
それはあたかも、悪い夢のような光景であり。
だが、運悪く生き残ってしまった艦上や地上の兵士諸君は、まだこの悪夢げんじつから覚めることを許されない。
全ての艦が大地に沈み、けれども未だに大地の震動は続いていた。
断続的スタッカートに、成長的クレッシェンドに地を穿つ音が、墜ちた艦の向こうから響いてきて。
それがどうしようもなく膨れ上がった時、艦の上から飛び降りながら、まだ動けた空兵たちは叫んだ。
「逃げろ! トリステイン軍だ――!」
声を皮切りに、船首の彼方むこうから、船尾の此方むこうから、果ては甲板を飛び越えて。
「出過ぎですぞ、陛下」
「油断はしませんよ――敵は浮き足立っています! 一気に制圧なさい!」
翼虎マンティコアの騎士達が、獅鷲グリフォンの騎士達が、鷹馬ヒポグリフの騎士達が、甲板にて二枚の水壁ウォーターシールドを従え独角白馬ユニコーンを駆り王杖振るう、荘厳な戦乙女ワルキューレに従いて現れた。
先ほどまでの砲火のためか所々鎧を傷つけている幻獣の騎士たちは、だがむしろ戦意を向上させている。
ただでさえ歩兵の身には厳しい相手だ。
踏みとどまる者は殆ど居らず、誰もが必死に森への奥へと逃れようと駆け、
「残念だが」
なれど、それすら敵わず、
「ここから先は予約制だぞ、空の民」
森の奥より現れた、空の軍装に身を包んだ兵の一団に、行く手を阻まれ吹き飛ばされた。
彼らは、昨夜未明の艦隊決戦にて墜とされたトリステイン空軍の将官。
この森に墜ちて彷徨っていたところを、避難する村の住民たち、を誘導していた女騎士に拾われた彼らは、恩義のために今、多くの民間人を有するこの森を守ろうとしていた。
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