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fate/vacant zero
竜が翼迫る雲の上
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れぬよう、帆の周りで弧を描き、短剣シェルンノスを突き立て、帆を軽く裂いて獲る。

 裂いた帆を口に食はみ、軽く呼吸を整え、準備は完了。

 飛んできた風の塊を避け更に上、縺れ合う二騎の軌跡を頼りにそれを目指す。

 目まぐるしく位置を違えようとしている二騎に気付かれないよう、相対線上に常に雲を挟む様に進路をこまめに変えながらしばし飛び。



 ――正面、間近に迫った雲が、突然弾けた。

 反射的にそれを交わし見れば、弾けて拓けた雲の切れ間から、杖を振った姿勢のままこちらを仰ぎ見て目を見開く、空に溶け込みそうなほど青い竜を駆る騎士と目が合った。


「ッ、せぇぅシェル!」

「万端だ! 振り抜け、嬢!」


 ソレを合図に、作戦通りに加速しながら空を斬る。

 短剣シェルンノスの軌跡から細い針が複数生まれ、騎士――見覚えのある男へとその身を飛ばす。


 『風棘エアニードル』。

 『飛行フライ』を使っている間は、他の魔法を一切唱えられない。

 極一般的な常識せんにゅうかんを逆手取った、実質二人掛りならではの奇襲おくのては、


『――――ッ!!!』


 けれど騎士に到達するよりも速く払うように振りぬかれた杖に砕かれた。

 無詠唱呪文、恐らくは『風槌エアハンマー』。

 杖を持っていない方の傍らを擦れ違い、進行方向はそのままに振り向きながら。

 既にこちらを振り向きつつあるその騎士と目が合い、その反応の速さに畏怖を覚え。


 同時、その姿に快芯の意を捉えた。





「タバサ!? 何やってんだこんな所で!!」

「知らん! てかそんなこと言ってる場合じゃねえぞ相棒、野郎の狙いが娘っ子の方に流れてる!」


 いきなり増えた背後の気配につい機体を傾かせた才人は、左舷の空で対峙しているタバサとワルドの姿を捉え、フリーズしたまま慌てふためいていた。

 器用な。


「いいか、この隙逃すんじゃねえぞ!
 下のデカブツか、そこの騎士サマか、どっちかだけでも確実に潰しちめぇ!」

「わかりやすいアドバイスありがとよ!」


 叫び、操縦桿を引き倒す。

 機首を跳ね上げ、更に宙に近くなった機体をドリフト気味にするっと回し、ラ・ロシェールを目指す遠く遠く見えるゴマのような敵の群れかんたいをじっと見据え、


「行くぞ!」

「よし行け! ってそっち行くんかよ!」


 ドリルか螺子の渕エッジでも滑ってんのかって軌道で、半ば重力任せに、見ていた方とは違う敵影めがけて突撃かました。

 もう、マジで燃料がかっつかつなのだ。

 下の艦まで下りたら最後、多分この高さまで戻ってこれない。

 だから
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