竜が翼迫る雲の上
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「もう、幾許の猶予もないわ。タバサ……サイトを、お願い」
一通りの作戦、とも呼べない無茶を説明し終えたルイズは、空を滑らかに動き始めた艦の方へ体ごと顔を向け、手にした白紙・・の書に目を落とした。
どうしたものか、と少しだけ迷い――思いなおして、一つ告げる。
「わかった」と。
もし彼女が、本当に言ったとおりのことを行えるならば――
上空、まだ廻り続ける二つの線を見つけた。
――艦を落とそうと試みるだろう彼も、まず間違いなくそれに巻き込まれてしまうだろうから。
それだけは、避けなければ。
そう考えた時、胸の奥深いところで、赤い瞳の魔物が問うた。
『何故?』と。
それに答えるでもなく、愛用の杖と短剣シェルンノスを手に、線の片割れ、黒い方を見据えた。
そんなものは、分かりきっている。
彼は、よき教え子であり……きっと、よき友人なのだから。
友人を死なせたくない、理由なんてそれだけで充分だった。
『もし……彼がそう思っていなかったとしても?』
イメージの邪魔だ。
目を閉じ、再び囁いた像を打ち砕く。
当然だ、と痛みと共にそう胸に抱く。
これ以上、行動が遅れてしまわないように。
万が一にでも、彼を死なせてしまうことのないように。
「Egomet私は draconis竜. Conscendi boreas風を駆る, nondum nomen名も無い draconis竜」
イメージするものはシルフィード。その対象は、私自身。
「Cito疾く, firmare靭く, sicut jegli-猛禽の様に――」
この呪言は呪文ではない。
ただイメージを強固にするためだけの、古代語ルーンによる自らへの戒め。
そうして一言、
「"Volucritas, sublimen崇く翔べ"!」
『飛行じゅもん』を唱え、この身を全き風と同化なした。
木々の合間をすり抜けて、枝葉の壁を踏み越えて、進路の燕を追い抜かして空に舞う。
仮面を着けていて、本当に良かった。
少なくとも、風圧で目を開けていられない惨事だけはないのだから。
「嬢!」
忠告こえに咄嗟に捩じらせた身を、砲弾のような速さで飛来する『風槌カタマリ』が掠めて過ぎる。
右面上方、艦隊最後尾の艦の上、身を乗り出し杖を振るう兵が幾らか見え、
《 ……〜〜〜§^ ̄〇! еЩ☆℃Θ£! #$〜〜〜…… 》
一瞬後には何事か叫ぶそれらの死角となる艦尾に入り、勢いもそのままに通り抜け、逆舷から甲板を越えた。
狙いを付けら
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