竜が翼迫る雲の上
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その面はいつかシルフィードの背で見た決意の表情に似て、だけどあの頃決定的に足りなかった何かに満ちているような気がした。
見ていて不安になるような怯えが、形なりを潜ひそめている。
ただそれだけ。
そのはずなのに、この人物が本当にルイズであると確証が持てなくなるほど、ルイズの印象は変化していた。
ほんの数十分前、涙交じりにサイトの動向を語った姿とも、つい先ほどまで呵々大笑していた怪人物とも、像が上手く重ならない。
そうして戸惑う私に対し――
「タバサ。ちょっとお願いしたいことがあるんだけど。いい?」
少し震えている声で、ルイズはそう問うて来た。
堅い、確固とした笑みと共に。
一方。
その一番騒がしい音の、発生源では。
「あの、艦長」
「ん? どうした」
ようやく体勢を落ちつけたアルビオン艦隊が、突然港の一角が爆発し霧の晴れ始めたラ・ロシェールへと進軍を再開していた。
威嚇砲撃を散発的に行いながら。
その判断を下したボーウッドに、参謀長が尋ねる。
「よろしいのですか? アレは」
「……アレ、とは」
二人が、更なる上空……艦のほぼ真上辺りで飛び回りながら鍔迫り合う、小さな二つの影を見上げる。
首が痛い。
「アレのことか? ホレイショ参謀長」
それに是を一つ返して、彼は問う。
「あの異常なまでの火力、墜とせる内に墜とすべきではないので?
いつまたこちらに首を向けるか分かったものではありませんし、子爵と奪やり合っている今であれば……」
「そうしたいのは山々なのだが……この艦隊では、な」
「ああ、そういやそうでしたな」
そうして二人は、また上空を見上げる。
この親善艦隊を筆頭としたアルビオンの艦ふねには、とある弱点ウィークポイントが存在する。
上方に対する武装を保持する艦が、極端に少ないのだ。
そのため、直上に居座られてしまうと、大半の艦においては乗員の魔法以外の攻撃手段が尽くガラクタと化してしまうのである。
それほどの弱点にも関わらず、他国と数多の空戦を繰り広げた過去を持つアルビオン空軍が、今日に至るまで放置し続けてきたのは何故か?
要因は幾らか存在するが、主だった物を挙げるなら一つ。
アルビオンという国の環境そのものだろう。
浮遊大陸と言う特殊な国土は、それ故に総じて標高が高い。
平地の森の中を歩いていると雲と擦れ違った、なんてことも日常茶飯事ザラだ。
そのため、国土全体を通じて酸素濃度は当然の様に薄い。
アルビオン
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