暁 〜小説投稿サイト〜
fate/vacant zero
竜が翼迫る雲の上
[4/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
は、名前を除く大半の部分が現代の文章で綴られていた。

 記された通りにその頁の右下を見やれば、確かにそこには印があった。

 文字と同じく墨一色の、一筆綴りに描かれた五芳星ペンタグラムだ。

 そこより後ろにはまだ何も書かれていないのを確認して、ルイズは大きめに一息吐いた。


 少し頭がくらくらしている。

 最後の文面を信じるならば、この書はまず紛うことなく本物なのだろう。

 杖を持ち、宝珠ルビーを指にして、杖か指かで五芳星ペンタグラムに触れることで書の力――恐らく『始祖の祈祷そらのじゅもん』が、この一連の序文と同じようにして浮き記されるのだろう。


 と。

 そこまで考えたルイズは、何かとてもマヌケたことに気がついた。

 文面とこの後付の署名から察するに、この書は始祖ブリミルの身内専用なのだろう。

 いわばプライベートな文書だ。

 他の人間が読めないような仕掛けを施すのも、当然といえば当然なのだろうが。


 ――ぱらりと、もう一度表紙の裏を見やる。


「……これ、“序文Prologium”の一単語が出てくるかどうかなんて完全に運じゃないの。
 注意書きくらい普通に書きなさいよ……」

 そこには、“選ばれし者、定められし者、杖もち、宝珠指にして印に触れよ”の一文と、先の右下と同じ様に五大の星ペンタグラムが大きく、ど真ん中に、デンと描かれていた。


 ……その他の文字と同じ様に、黒く揺れる文字で。

 序文に触れるまで影も形もなかったことを考えると、どうも単純に魔法具アーティファクトの効果範囲と起点を間違えただけのように思える。

 そう思うと、なんだか始祖がやたら身近な存在の様な気がした。



 恐れ多くも親近感など抱きながら、杖を持ち、序文末尾の印に触れてみる。

 すると、視覚ではない脳裏の奥で、何かが見えた。

 目を閉じれば、その何かはよりはっきりと物を語ってくる。


 それは、“意味”だった。

 文にて綴られ、言葉にて伝えられるべきそれが、その何いずれにも依らずに意識へ直接叩きつけられている。

 曰く、“望め”と、“願え”と。

 “お前の《それ》を、この身しょに託せ”と、その印は刻んでくる。


 望むもの。願うもの。

 そんなもの、決まりきっている。

 “魔法の才”。

 どれほど形こそ変わろうとも、ずっとそれだけが欲しかった。



 でも、

――え……消え、た? わたしの――

     今、

――お前は、魔法を使えてるよルイズ――

        “必要”なのは……

――うそ、直撃したのに――

それじゃない。

 “力”が
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ