竜が翼迫る雲の上
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は、名前を除く大半の部分が現代の文章で綴られていた。
記された通りにその頁の右下を見やれば、確かにそこには印があった。
文字と同じく墨一色の、一筆綴りに描かれた五芳星ペンタグラムだ。
そこより後ろにはまだ何も書かれていないのを確認して、ルイズは大きめに一息吐いた。
少し頭がくらくらしている。
最後の文面を信じるならば、この書はまず紛うことなく本物なのだろう。
杖を持ち、宝珠ルビーを指にして、杖か指かで五芳星ペンタグラムに触れることで書の力――恐らく『始祖の祈祷そらのじゅもん』が、この一連の序文と同じようにして浮き記されるのだろう。
と。
そこまで考えたルイズは、何かとてもマヌケたことに気がついた。
文面とこの後付の署名から察するに、この書は始祖ブリミルの身内専用なのだろう。
いわばプライベートな文書だ。
他の人間が読めないような仕掛けを施すのも、当然といえば当然なのだろうが。
――ぱらりと、もう一度表紙の裏を見やる。
「……これ、“序文Prologium”の一単語が出てくるかどうかなんて完全に運じゃないの。
注意書きくらい普通に書きなさいよ……」
そこには、“選ばれし者、定められし者、杖もち、宝珠指にして印に触れよ”の一文と、先の右下と同じ様に五大の星ペンタグラムが大きく、ど真ん中に、デンと描かれていた。
……その他の文字と同じ様に、黒く揺れる文字で。
序文に触れるまで影も形もなかったことを考えると、どうも単純に魔法具アーティファクトの効果範囲と起点を間違えただけのように思える。
そう思うと、なんだか始祖がやたら身近な存在の様な気がした。
恐れ多くも親近感など抱きながら、杖を持ち、序文末尾の印に触れてみる。
すると、視覚ではない脳裏の奥で、何かが見えた。
目を閉じれば、その何かはよりはっきりと物を語ってくる。
それは、“意味”だった。
文にて綴られ、言葉にて伝えられるべきそれが、その何いずれにも依らずに意識へ直接叩きつけられている。
曰く、“望め”と、“願え”と。
“お前の《それ》を、この身しょに託せ”と、その印は刻んでくる。
望むもの。願うもの。
そんなもの、決まりきっている。
“魔法の才”。
どれほど形こそ変わろうとも、ずっとそれだけが欲しかった。
でも、
――え……消え、た? わたしの――
今、
――お前は、魔法を使えてるよルイズ――
“必要”なのは……
――うそ、直撃したのに――
それじゃない。
“力”が
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