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fate/vacant zero
霧に煙るは颪か灰か
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 雲の上、とまでは行かないが、それでも見晴らしのよい空の中。

 ずっと遠く、ハエのような大きさで見えている黒鷲イーグルを追って、背に人二人を乗せたシルフィードはわりと必死に羽叩いていた。

 2頭……もとい2羽?の距離はそれでもじわじわとしか縮まることはなく。

 じれったそうに急ぐシルフィードの背はお世辞にも乗り心地がいいとは言えなかったが、その背の二人……ルイズとタバサは、知ったことでもなさそうに話をしていた。

 もっと正確に言うなら――


「……で、ね。サイト、あれが武器だからって。助けたいって、後悔したくないって……」

「飛び出した?」


 タバサが、ルイズから事のあらましを尋きき問ただしていた。


「なら、この先には」

「攻め込んできてるアルビオン軍が居るはずよ。
 ……何考えてるのよ、あのバカ。
 バカ。ホントバカ。
 一人で軍隊に勝てるはずないじゃない……」


 早く止めなきゃ。

 そう呟くルイズを背にして、タバサはしばし目を瞑る。


 なぜ、相談してくれなかったのか。

 勝算はあるのか。

 怖くは無いんだろうか。

 訊ねてみたいことは後から後から、泉のように湧いてくる。


 だが肝心のそれを尋ねられる彼との間には、まだかなりの広さの空が群がっている。

 学院を出た時に比べたら大分狭まってはきたとはいえ、この調子では追いつく前にラ・ロシェールに到達してしまいそうだった。


 このままなら。

 シルフィードが、"タバサの風竜"である限りは。

 そう考えた時には、もうその手は己が外套の裏へと潜り込んでいた。


「ルイズ」

「……ん? どうしたの?」


 軽く肯く。


「一つ、約束してほしい」

「こ、こんな時に何よ?」

「この件に、"タバサ"は一切関与してない。
  一段落した後で誰かに何か尋ねられることがあったら、それを思い出してほしい」

「?
 別にいいけど……、じゃあここに居るタバサは誰よ?」


 外套から、目当てのものを引き抜いた。

 顔の上半分を隠す仮面を装け、応える。


「『地下水』。
 気紛れな傭兵『地下水』。
 しばらく、そう呼んでほしい」


 ……恥ずかしげもなく、とは流石に行かないけれど。

 仮面が篭って熱い。とても。


「      あ、ぅん。

 分かったわ。
 うちの使い魔が色々迷惑かけてたみたいだし、うん」


 楽しかったから迷惑ではないと思う。

 そしてその間は何。


 ……それどころではなかった。

 ラ・ロシェールまでは……もう10分と
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