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fate/vacant zero
霧に煙るは颪か灰か
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 ずきずきとした余韻が少し辛くても、それだけで元は取れたような気がするから不思議だ。


- ――俺はあいつの使い魔だ! 指一本たりとも触れさせてたまるかよ! -


 ふと、あの宿屋で彼がそう叫んだことを思い出す。

 こんな世界に連れられて、それでも尚なお綺麗だと、眩しく映った彼を。

 そんな彼だからこそ。


- ――助けたいって、後悔したくないって―― -


 今、彼があの鉄の大鳥に乗って戦場に向かっていると聞いても、何も不思議ではないと思った。



 では、私はこのまま、どうすればいいのだろう。

 私は、このまま。……どうしたいと、思うのだろう?



 思う間にも彼我距離はざまは狭まり、接触の時は近付いている。

 惑っているのは、問いか、応えか。


 どちらにせよ――想いの答は、未だ見つかりそうにない。







Fate/vacant Zero

第二十九章 続編 霧に煙るは颪か灰か







「な、な、ななな゙……」

《きゅいきゅい、なにコレなにコレ。
 羽動かさないでお空飛んでるのね。
 お父さまみたいにおっきいのに、精霊の助けもなくこんな飛び方できるなんてびっくりなのよ》


 突然の影と振動に、すわ敵襲かとクソ狭いコックピットの中でデルフの柄を引っ掴むほど動転した俺は、頭上から響いた聞き覚えのあるのーてんきな声に脱力するはめになった。

 決して落ち着いたわけではないが。

 とんとん、と鼻面に突付かれた機体が揺れに揺れてるし。

 酔う。


「……いやいやいや待て待て待て。
 なんでシルフィがこんなとこまで憑いてきてんだよおい。
 まさかその、……ひょっとして?」

「あー。相棒がなに考えてるかは大体わかっから、結果だけ言うとだな――」


 デルフが気まずげに言葉を切った一瞬。

 揺れが止まったかと思うと、背筋の粟立ちそうな軋む音を立てて、風防の内に突起と声が一つ増えた。


「そのまさかだぜ」

『ご名答、だよ」


 新たに響いた声の方を仰ぎ見れば。

 頭上、座席シートの真上辺りから文字通りガラスを縫って突き込まれた草銀色の短剣と、風防のガラスに膝を着いてそれを握るいつぞやの仮面姿の少女の姿。

 ……見えそで見えない。

 で、なくて。



「――な、なんで!?
 え、どうしてタバサがこんなところのそんなところに!?
 危ねえって色々!」

「ОК、落ち着こうぜ相棒。
 てか色々って何よ」

「どうしてって言われてもよぉ。
 坊主、分かってて言ってんだろ?」


 どうどう、
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