霧に煙るは颪か灰か
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からこそ、今、こうして静かな気持ちで呪文を紡いでいられる。
「その秘物──何としても――今、ここで、貴様を落とすぞ、神の左手ガンダールヴ、ヒラガ・サイト。
ソレは。アレらはこの世界ハルケギニアにあってはならぬのだ……!」
誰に宛てるでもない、怨鎖の声。
力のなかった己にか。
ソレを駆る才人つかいてにか。
はたまた逃げるしか能を持たなかった貴族にか。
あるいは――全てにか。
本人にも分からないその呪言の終わりと共に、彼の魔法トライアングル――『斬空エアスラッシュ』は形を成し。
同時、彼の敵は息を吹き返した。
鋼と風の三度目にして真なる一度目の決闘。
それは今この戦場にて、正まさしく杖を交えようとしていた。
「――さっさと起きる」
「きゅう〜〜」
「や、そこはそっとしといてやれって……。
どうせ聞こえてねえぞ、殆ど直撃しちまったからな――音が。ていうか音だけ」
そこは村外れだった森の、少し奥まった辺り。
シルフィードは、干された布団の様に木に引っかかってノびていた。
風韻竜の五感は人の何倍も鋭く、精霊やらの魔法に関するものに関しては特にソレが際立っている。
彼女の纏っていた風の守りは、風は防げども音までは防いでくれなかった。
むしろ素通しだったのだ。
つまり何が起きたのかというと、守りを過信したシルフィードは、至近距離で炸裂した颱暴弾ショットガストをたかが風石と侮って防御すらせず、無防備に無作為に風の護りで受け止めたのだ。
結果、風を通さないはずの守りの裡でビリビリと空気を震わせるほどの音しょうげきはが鼓膜とか翼とかその他諸々を直撃。
前後不覚に陥り視界すら喪失しかけたシルフィードは慌てて高度を落としたが、森の木々の一本一本がはっきりと視認できる距離になった辺りで意識を手放し。
当然、そのまま減速もへったくれもなく森の中まで一直線に空を滑り――今に至る、というわけだ。
マヌケ極まりない。
まだ少し着地の衝撃でふらついている頭の仮面……ヒビが入っている……を押さえ、タバサは嘆息した。
この様子では、例え目を覚ましたとしても先ほどまでのような空中戦は不可能。
それこそ、空に姿を現したと同時に対空砲に迎え撃たれてもう一度墜落する嵌めになるのが関の山。
……どうしよう?
わたしや地下水シェルンノスは、基本的に対人戦や対魔獣などの生物相手の依頼・任務が多く、凧ふねのような建造物を攻撃するのは苦手だ。
試す機会がまるでなかったというのもないではないけれど。
ちらと、空高
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