霧に煙るは颪か灰か
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任せるのみなのだ。
「くっそ……タバサたちはどうなったんだ!? 無事なのか!?」
「相棒、今はそれどこじゃねえって! 何とかして立て直さねえ、っと!?」
ガゾン、と。
何か中身のない物が凹んだような音がして、才人が、デルフが、コックピットの中で上下逆さまに急制動を喰らった。
ハーネスが体に食い込み、体勢を立て直す。
「今度は何だ!?」
「相棒、左の羽に何かの魔法を喰らってる! 何か、近くに居るぞ!」
翼に受けた衝撃で、複雑だった回転のうち前転と側転が緩み、回転を落としながらフリスビーのように宙を舞い始めたF-15イーグル。
それより少しだけ高く浮かぶ雲の中に、その攻撃者は潜んでいた。
息を殺し、静かに緩やかに風竜を駆って雲の中を旋廻している彼は、見下ろすF-15イーグルの動きが緩んだのを見ると、丁度練り終えた力を杖に乗せて振り下ろした。
杖から拡がる青い空気の波が狙い通りにF-15イーグルを覆い、情報が意識を覆い潰す。
『解析ディテクト』の魔法が伝える情報それは、眼下の物が竜などではなく、紛れもない既知にして未知なる物――『槍』であると示していた。
「やはり、これも聖地所縁ゆかりのもの――ということか」
揮下の竜騎士を悠々屠ほふる、ありえない詠唱速度の遠隔魔法。
あまりにも異様な加速力と機動力。
そしてたった今、颱暴弾ショットガストも『風槌エアハンマー』も凌いだ、面の攻撃に対するふざけた耐久力。
どれ一つとっても、尋常のハルケギニアの錬金術師には為しえないものだ。
彼、ジャン・フランシスの知る限りでは、このような生物とも道具ともつかぬ何かを作り得る何者かなど、まだ己が青かった頃に手にしていた聖地所縁のそれ・・らの製作者以外に思い当たらなかった。
侮ってはならない。
かといって、焦ることは尚更いけない。
これがかつてのアレらと同じであるならば、ソレを駆っているのがかの左手の小僧・・・・・であるならば。
油断とは、即ち死そのものだ。
既に死した部下ら、竜騎士然り。
アルビオンを陥とした日の『偏在ディヴィジョン』然り。
遠き日の彼の屋敷で、――――――――――――然り。
だから彼は、潜伏していたラ・ロシェールの上をこの『槍』が通り過ぎた時、予定を放棄し仕掛けだけを残してここに、艦の死角である直上ここで万全の必殺を狙うべく潜んでいたのだから。
結果は上々。
これを駆る騎士が小僧であったことだけは驚いたが、むしろ奴以外の人間がこのような物を駆っていたならば、それこそ驚く間に機を逃していただろう。
だ
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