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fate/vacant zero
霧に煙るは颪か灰か
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 油断こそが最大の敵とはよく言ったものだな、と従兵に引き摺られながら起き上がりかけたジョンストンのアゴいしきを爪先で刈けり取り思う。

 ともかく、面目上のとはいえ司令官がこうして凶弾・・に倒れられた・・・からには、一刻も早く港を奪わねばなるまい。


 そのためには、とボーウッドの突然の兇行ぜんこうに脅える兵士へ向き直る。


「それで、だ伝令君。
 竜騎士隊を全滅させたという二騎について、なにか他に報告はないか?
 特徴のようなものでもよいのだが」

「は、え、ふ、ははい、サー!
 一騎は二人乗りの風竜で、やたら強力な冷気の吐息ブレスと『氷槍ジャベリン』並みの氷柱が混ざった『凍える風ウィンディアイシクル』に加え、風弾と火弾を複合使用したような怪爆発で彼我の遠近に関係なく攻めてきておりました!
 もう一騎は並みの竜より巨大な猛禽で、こちらは並みの騎士では有り得ぬほど果敢に懐に飛び込み、『土』系統と思しき高威力の槍をもって鱗など知らぬとばかりに竜を砕いたと報告が挙がっておりますですサー!」


 落ち着けと制したくなるほど慌てた伝令の報告は、あまりにも荒唐無稽で、だが竜騎士隊壊滅を二騎で成し遂げるような非常識げんじつをやらかす輩としてはこれ以上ないほど分かりやすい。

 むしろ、これぐらい常軌を逸していてもらわねば困るというものだ――主に常識セオリーの面子が。


「片方は、竜ではないのか?」

「は、サー!
 羽ばたくことはおろか、首を曲げることさえ致しません故ともすれば鳥どころか生物ですらないやも知れませんが、少なくとも竜よりは鳥に近い形状をしておりました!」


 ふむ、としばし腕を組みボーウッドは予測を煮詰める。

 当面、我ら艦隊が相手をせねばならないのはその二騎だろう。

 竜騎士隊が全滅の憂き目にあった今、対空戦を堅実に行えるのはもはや我ら六隻の砲列艦のみだ。

 おそらくトリステインの管轄にはないであろう竜騎士――竜騎士隊が既に壊滅しているにも関わらず、未だラ・ロシェールのトリステイン軍本隊に動きが見られないということは、恐らくそういうことなのだろう――の撃墜と、トリステイン近衛軍の牽制を同時にこなすのはかなりの激務となるだろう。

 だが、それでも――


「この艦ヘッジホッグと、この艦隊ならば」


 何とかこなせるやも。

 その確信かしんを胸に、ボーウッドは号を発する。


「諸君、油断しろとは言わない。
 だが、敵を過剰に恐れることもない。
 竜騎士隊は居らずとも、レキシントンは、我ら艦隊は健在なのだ。
 我らが任務は、トリステイン航空戦力の壊滅。
 この場に居らぬワルド子爵も、機を窺っておるのだろう。恐らくは、敵陣深くにて。

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