霧に煙るは颪か灰か
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――否だ。朧げだけれど、覚えている。
あのワルドの『偏在ディヴィジョン』の一つを、『失敗した魔法』で確かに打ち倒したことを。
フーケの土塊人形ゴーレムにこそ通用しなかったが、あれは人形ゴーレムだったから――生き物ではなかったからではないだろうか。
多分、そうだ。
そうだ、と思う。
思いたい。
……思わせて、お願いだから。
もし。もし、そうであるのならば。
「竜にだって……少なくとも、人には効くはず。
……よ、ね?」
自信はない。
全くもってあるはずもない。
生身の人間に直撃させたことは、一度もないのだから。
直接、直撃させたことは。
けれど。
今、仮に自分に何か出来ることがあるとすれば、これくらいしか思いつかない。
もしもダメでも、タバサやあのバカなら、きっと何とかしてしまうだろう。
なら、今はただ助けになれるように……討つ。
杖を握りこんだ手をポケットから引き抜いて、そっと唇にあてた。
ひんやりとした青い宝石が、気分を少しだけ落ち着かせてくれる。
(どうか、見守っていてください、姫さま。わたしが……サイトの主たれるように)
心の内で祷りを願い、きっ・・とサイトの向かう先を見据える。
三頭四編隊ばかりの火竜ドレイクの内、半数ほどがシルフィードこちらに向かってきているのが見えた。
ここから、届くだろうか。
それだけを気にしながら、ルイズは飛来する影に杖を向けた。
「……すまない、よく聞こえなかった。もう一度報告してくれ」
レキシントン艦上で砲撃指揮を執るボーウッドは、今にも激発しそうなほど顔をドス紫に染めたジョンストン司令を制し、何故だか憐れなほど怯えている伝令を促した。
「s、サー。斥候よりの報告、我らが艦隊積載部隊の竜騎士ドレイク隊の火竜、全騎撃墜を確認したとのことです。
本艦居残りの管制番からも同様の報告が――」
「全滅だと!? つい先ほど、敵影発見の報告が挙がったばかりではないか!」
ものの見事に激発したジョンストンに眉を顰ひそめ、だがボーウッドはなお先を促す。
「それで、敵は何処の騎士隊なのだ?
トリステインにあってそれを為せるような騎士隊となれば、その名は自ずと限られるが」
「サー。……いえ、それが……敵は二騎です」
風の音が、とても喧しく耳に響く。
「すまない。砲撃音を耳にしすぎて、鼓膜がイカレたらしい。
もう一度頼む」
「二騎です、サー。
聞き間違いでも、伝達のミスでもありません。敵は、二騎です
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