霧に煙るは颪か灰か
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呆けてる場合じゃねえか!
後ろから一騎、下前方の焼け跡から十ばかり来てんぜ、手ぇ動かしな相棒!」
「ん、ぉ、ああ!」
遍く疑問を投げ捨て桿に手を沿え、近づく小さな翼影を待ち受ける。
後ろは見ない。
見当たらない影を思い、見る必要はないのだと、確信に近い何かを信じた。
「イルククゥ、その盾もう少し続けて。
シェルンノスは『凍える風ウィンディアイシクル』、重ねて撃つ」
「OК、任せな『二代目』。
タイミングは好きに合わせるぜ」
「うー、これそういう長続きさせる効果はないのね、おねーさま。
精霊さんたちちっちゃった」
「なら、またいつでも使えるように用意だけしておいて」
「ふぇえ、竜使いが荒いのねー」
前方、慌しさの割にイマイチ緊張感のない戦闘行動を続ける地下水タバサ一同。
それを見ているだけだったルイズは、羨望と無力感に苛まれていた。
無謀な使い魔を一人では死なせるまいと手を引かれるままにここまで来たものの、今となってはその思いさえも虚しかった。
馬鹿使い魔の『武器』は空を縦横無尽に駆け回り、相対した竜を木端微塵と打ち砕く。
そのバカが窮地に陥れば、気に喰わないナイフの助力を得るタバサの氷の魔法と、その使い魔の韻竜が放つ紫色した風の玉せんじゅうまほうが救い出す。
『武器』が砕いた竜に乗っていた騎士を回収した竜も、たった今、背後を取ろうとして『凍える風ウィンディアイシクル』の氷の薄刃に翼を抉られた竜の騎士も、共にタルブ領から離脱を始めた。
そうして戦場に残る竜の姿が減っていく都度、怒りとも悲しみとも解せない言い知れぬ想念が心に満ちていくのだ。
何もすることのない自分が、情けなかった。
何も出来ない自分が、みじめだった。
戦うことの出来る二人(+а)が、羨ましかった。
……嫉ましかった。
そう思えば思うほど、何かあるはずだと、そんなはずもない何かを探し。
だが、服のポケットをまさぐる片手に、胸を掻き抱いた片手に、それは触れた。
胸を押さえる手に触れるもの1つ。
それはぼろぼろの白紙書物、『始祖の祈祷書』。
それを強く握り締める。
ポケットの手に触れるもの3つ。
1つはひらひらした布、未使用の手拭。
1つは細くしなやかな金属、愛用の杖。
1つ、小さく硬い指輪リング。水のルビー。
指を小器用に操ってリングを嵌め、愛用の杖を掴み取る。
その冷たくも確かな感触を確かめ、胸の祈祷書に、自らの内に問いを投げる。
自分に出来ることは、今、この戦闘の場において、本当になんにもないのか
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