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fate/vacant zero
雲影二つ
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と。



 才人が窓枠を踏み切り板にして、走り幅跳びしていた。





「へ?」



 しばし窓枠から見え続ける、腰を後ろに突き出した――というとアレなので、手と足を前に伸ばして滞空する後姿。



「え?」



 そして当然ながらその体は、徐々に↓へフェードアウトしていき――



「ゑ……」



 ルイズと窓枠が切り取った空間との延長線上から、至極あっさりと姿を消した。



「УеэээээааааааааааааааааААААААААААААААААААА!?
 何!? 何やってんのアンタはぁああああ!?」


 ルイズは腹の底から奇怪な叫び声を上げながら窓まで転びかけ寄り、



『そこに居るのは誰か!?』



 学院長室からの槍のような怒鳴り声に90度方向転換させられ、階段を一目散に駆け降ちていった。

 そんな彼女の心境は――


(あの馬鹿、まさかあの玩具で突っ込む気じゃ……いややりそう、やりかねない、やる、間違いなくやる!

 は、はやく急いで止めないと――ああもう――)



「あんの脳筋使い魔ァアア――ッ!!」



 ――斯く吹き散らされた花壇の様に荒れていた。



 なお、才人は一応体育会系ではないということをもう一度記しておく。

 多分嘘ではない。多分。







「よい、放っておきたまえ」


 その一言でオスマン老は、今にも部屋を飛び出さんとしていた兵士を押し留めた。



「は? し、しかし……」


「構わんと言っておるじゃろう。
 誰かは見当がついておるし、仮に言い触らされたとしても、どうせ後々伝えねばならんことじゃ。
 放っておいても、別になんも害はありゃせんよ」

「はぁ……」


 気の抜けたような生返事をする兵士を傍目に、オスマン老は軽く思考する。


 アレは、恐らく間違いなくラ・ヴァリエール嬢のものだった。

 ならば――

『あんの脳筋使い魔ァアア――!』

 ――やはり、と言うべきか。彼が何かを始めたようだ。



 貴族にも恐れられたフーケを捕らえ。

 陥落寸前のアルビオンより生還し。

 平民には扱えないはずの魔法を学び。

 あのような不可思議な翼を持ち帰り――



「そうして今度は、トリステインを救うのじゃろうかのう……」



「……いま、なんと?」


「ん?

 ――なぁに、爺の独り言じゃよ。
 いちいち気にするでないわ」


 知らず声に出していたことを煙に巻き、なおも老は物思う。


 
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